頂を目指す二ノ姫X

□お笑いテニス
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「千手観音」







「ぶふっ!あ」


「《15−15!》」



いつの間にか小春が一氏の後ろにいて、2人とも観音様のように手を出していた
それには桃城も吹き出し、サーブをネットに引っかけてしまった


「おお――っアイツらこない早う千手観音出すなんて〜っ!」

「抜かり無いわ!!」

「(え゙え〜〜っ)」

「何やってんだ桃城。惑わされてんじゃねーぞコラ!!」

「だ、だってよ…千手観音だぜ。笑うだろ」


桜も桃城同様吹き出し、咳き込むように笑っていた
肩を小刻みに震わせる様子に部員たちは珍しいものを見たと目を丸くしていた


『フフッ…駄目だ……この試合まともに見れる気がしない…』

「何か新鮮っス
桜先輩ってこういうので笑わないイメージがあるんスけど」

『国光が見てるお笑い番組を一緒に見ててね。結構ツボったりしてるのよ』

「………部長…お笑い見るんスか」

「何だ、越前」

「………別に」


ジロっと見下ろされリョーマは口を噤んだ
手塚は手塚で内心かなり忙しないことになっている
しかし顔に出ないため誰にも気づかれていなかった

海堂に怒鳴られた桃城はもう一度集中する


「クソッ!!」

「らぁぶ!!」


サーブを返した小春は前に走り出した
一氏もまた構えを変える


「青学にもコレ出来る奴おるらしーで
ほな行くでユウくんV」

「カモーン小春V」

「(コ、コイツらまさか……!)」




「「同調(シンクロ)!!」




そう叫ぶや否や、2人がネットで逆立ちし、同じ動きで立ち上がった
左腕を上げ、表情は笑顔だ
さらにその動きにつられた2人を置き去りにしてポイントを取った



「《15−30》」


「ひぃぃ――っシンクロナイズドスイミングかよ!!」

「こうなったら俺達もやるしかねぇな…シンクロ!」

「で、出来るかぁ!!」

「完全に惑わされてる…」


河村が眉を下げた

リョーマは笑いをかみ殺しながら
同じく笑うのを抑える様にしている乾に問いかけた


「何スかアイツら?」

「奴等は相手を自分達のペースに巻き込むプロ中のプロだ!」


四天宝寺もまた笑いながら、その試合を余裕そうに見ていた


「完全に流れを掴んどるがな」

「ホンマ先輩達とやりたないわぁ」

「可哀想やあの2人…」

「笑かすばかりや無いでぇ」


その時、海堂が動いた
彼らの動きにいい加減苛立ちが募っていたのだ


「(フザけんな。いい加減にしやがれ!!)」

「そうだ海堂。お前のそれで流れを引き戻せ!!」






「出たぁぁぁ。トルネードスネイクだ!!」






それは氷帝戦で見せた海堂の新技
ボールが螺旋のような軌跡を描いて小春に向かっていく
乾が自信ありげに拳を握ってそれを見守った。しかし






「堪忍してぇな






ジャイロ回転しとるやんか」







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