頂を目指す二ノ姫X

□お笑いテニス
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『(全く……厄介ね)』


小春の冷静な声に乾が虚を突かれた顔をした
彼は先ほどのテンションが嘘のようだった


この打球はバックスピンの上向きのマグナス力と進行方向に対して
45度の入射角での回転軸を持つ力との融合と言えるやろ―――――……
回転する事によりこの打球は空気抵抗をほとんど受けないと言ってもええわ
その分他のストレートの打球よりも0.02秒速く到達する
距離にして81.35064cm――



これがトルネードスネイクの正体やでぇ」


「!」

「小春は乾クン以上の情報量を持ってる
それもノートやない…頭の中に全てね……





彼のIQは200……いわゆる天才や」





海堂のトルネードが返され、ゲームを奪われてしまった
その容姿からは想像できない、乾以上の情報量
なおかつIQ200の頭脳を持つ小春には誰もが唖然とした


「じゃあホモっぽくしてるのも全て計算…」

「ユウくんやったわよ――っV」

「小春ぅ〜〜っ!!」

「違うみたいだけど」

『面白いわねぇあの子たち』

「……あまり見るな」


手塚が低い声で桜の視界を塞ごうとした
彼女の教育上悪いと判断したその感覚はどこか桜の父親だった
それに思い当り手塚は人知れず肩を落とした


「気にすんな海堂!だいたいあんな奴が乾先輩以上のデータマンなわけ…」

海堂薫くんV

青春学園中等部2年7組。5月11日生まれの牡牛座…
趣味はバンダナ集めとマラソン。動物に優しいトゥ シャイ シャイボーイV――――…
幼稚園の頃は女の子によく間違われ薫ちゃんと呼ばれスカートを履かされよく泣いたものよね―――――………
大きくなってもこの前買い物に行った帰りなんか……



「ストーカーか!?」


海堂のプロフィールを喋り始めた小春を桃城が指差す
だが気にせず小春はまた話し始めた


「使用シューズはPUMAセルファクターPT06340067……………


スニーカーか!?」


「知るかぁ!!」


ノリツッコミした小春に桃城はキレた
さらに小春はチェンジコートの際に海堂の尻を撫でた


「ひぃぃぃ〜〜っ!!何しやがんだコラァ!!」

『あら〜』


当然海堂は引き攣った声を上げ、小春に掴みかかった
襟を掴んで怒鳴るが、桜はフッと吹き出した
小春の胸には、彼にないはずの膨らみが


「ねえ、暗くなるまで待って。お・ね・が・いV」

『ホントに色々仕込むわね。凄いわ』

「……感心するな」


その正体はテニスボールだ
下に落ちたボールに海堂の怒りがさらに高まる


「…あ」

「ゴルァ〜〜!!ドタマかち割んぞ!!」


拳を振り上げる海堂
それを審判が止めるより前に柔らかい、しかし有無を言わさない声が言った


『薫。戻りなさい』

「!!」


ハッとした海堂が手を離して小春と距離を取った
桃城はいつも見ている光景だが、思わずニヤけずにはいられなかった


「(……やっぱすげぇよな、桜先輩
あのマムシをたった一言で止めるなんてよ)」


小春はニッと笑って桜に視線を向けた


「相変わらずかっこええわ桜ちゃんVらぁぶV」

「ごら〜!!小春!!桜桜ってええ加減にせぇ!!死なすど!!」

「っつーかそんな目で桜先輩を見るなぁ!!」


必死に小春の視線から桜を遮ろうとする桃城
一氏が猛獣よろしく唸り、それを海堂が睨みつける
だが、話題の中心である桜はふんわりと笑った


『フフ。一氏くんは本当に小春ちゃんが好きねぇ』

「………え……そんな和やかに笑うところっスか?」

「桜って……やっぱりいろんな意味で凄いよね」


試合は0−3で四天宝寺リード
桃城と海堂は徐々に追い込まれていった
会場は彼らのお笑いテニスに爆笑していた


「ひいぃ――っ腹よじれるでぇ!」

「楽勝やで楽勝!!」

「ひぃぃぃ見てみぃ。完全に相手を呑んでかかってる!」

「って言うか……吸ってへん!?」


遠近法を上手く使い
見事に遠くに見える桃城と海堂を近くにいる小春と一氏が吸っているようになっていた

桃城と海堂は険しい顔つきで桜がどいたベンチにドカッと座った



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