頂を目指す二ノ姫X

□東西の超ルーキー対決
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しかし、遠山は怯まなかった
後ろに跳び回転しながらボールの軌道を追い打ち返した
人間の動きとは思えない俊敏な動きだ
リョーマが一歩も動けずにボールを見送りそうになる


「この1球勝負、金太郎さんの勝ち…」

「ま、まだや!」


白石が叫んだ通り、これで終わりではなかった
リョーマは無我の境地を使い、後ろ向きでボールを打ち返した


「おお――っさすがコシマエや!!アレ拾うたんか。スゴイ…わ…!」

「か、『神隠し』!?」


リョーマが打っていたのは千歳の『神隠し』だった
遠山も、ギャラリーもボールの行方を見失った
だが、桜と遠山は同時に声を上げた


『あった』

「ふんぎぃ!!」


力強い遠山の打球を、リョーマはドライブBで打ち返す
しかし遠山は規格外の動きでボールを追い、拾う

続いてリョーマは橘のあばれ球
いくつにも見えるボールを遠山はすべてラケットで捕えていた


「アイツ。何てデタラメなテニスをするんだ!?」

「『無我の境地』の越前とほぼ互角だ!!」

「って事は無我の境地で急激に体力を消耗する前におチビは早いトコ決めないと」


菊丸が切羽詰まった表情で言う
桜は目を細めてリョーマを凝視していた


「金太郎さんの凄いトコはあれで自然体ちゅーとこや
そして無尽蔵の体力、野性的なカン…」






「ウチらの誰よりも強いで」























――もう一方の準決勝
立海大附属(神奈川)VS名古屋星徳(愛知)

その試合を見ていた栞は口を尖らせていた


「(役者だなぁ……)」


展開は最悪だった
シングルス3は柳生のレーザービームが通用せず2−6
ダブルス2は丸井とジャッカルのペアで1−6
まさかの立海の負け越しである
さらに現在シングルス2は、赤也が血だらけでフェンスに磔にされていた



「《ゲーム名古屋星徳 リリアデント・クラウザー5−0!!》」


「(…………よぅやるなぁ……これが貴方の覚悟ってことですか)」


赤目になった赤也の力はかなりのものだ
しかし、それすらも軽く凌駕する名古屋星徳
留学生だけで構成したチームの力は強大だった
立海にも諦めのムードが漂っていた

だが、栞は小さく噴き出して彼を見た


「お膳立てされた舞台で悦に入ってる場合じゃないよ〜」


マッチポイント
赤也はコートに倒れ込んでいた
誰も赤也を直視できない
それほど酷い試合だった
クラウザーは赤也を見下して言う


「Are they really last year's champs?
(彼等は本当に昨年の王者なのか?)」

「In my country, even a little kid could beat them!!Yah-!
(俺の国なら小学生でも勝てるぜ!!ククク…)」

「や、柳生先輩…今こいつら何て言ったんスか?」


英語が苦手な赤也が分かるはずもなく柳生に聞く
すると柳生は眼鏡を押し上げながら言った


「本当に昨年の王者か?
我々の国なら小学生でも勝てるぞ、このワカメ野郎……と」

「(紳士じゃなくなったよ…)」


肩を落とした栞だったが、次の瞬間全身を緊張させた
赤也から、凄まじい殺気のようなものを感じたのだ
視線を向ければ、赤也が立ち上がっていた
目だけでなく、全身を赤黒くした赤也が凄まじい形相でクラウザーを見ていた


「(うっわ……こんな所にまで……)」







「潰れろ!」







そこからは早かった
瞬く間にクラウザーを圧倒し、容赦なくボールをぶつけコートに這いつくばらせる
ラフプレーに笑い、相手が崩れ落ちる様に喜びを感じていた
その姿は悪魔(デビル)赤也。栞は堪らない、と息を吐いた


「(あ〜あ。こうなっちゃうんだねぇ……)」







「そうだ……王者立海の3連覇に死角はねぇ」







「《ゲームセットウォンバイ立海大附属 切原赤也7−5!!》」





栞はクルッと踵を返し、そのコートを後にした



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