夜空を纏う四ノ姫2

□最後の審判
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「桜がいる、平和な並盛にみんなで帰るために戦うんだ!!」






『!!』


全員が呆気にとられる中で、夕月もまた息をつめた
迷いの無い彼の覚悟が、とても眩しく感じられた。何よりも


『(……私、か)』


きっと打ちのめされて、絶望したはずだ。なのに、彼は


『……それがあなたの決断。そして覚悟ね』


夕月は静かな声で言って、守護者たちの顔を見た
驚いていた彼らは、しかし同じように目に覚悟を宿していた
夕月はフッと笑って、そして優しい目をしてツナを見上げた


『貴方の、貴方たちの覚悟と決断
しかと受け取りました』

「!!」

『夜のアルコバレーノ、夕月の名に於いて沢田綱吉への最後の審判を終了します
私の最後の審判、決断力を合格とし、アルコバレーノの試練は全てクリアです
あなたを、アルコバレーノの印にふさわしいと認めます』

「!!それじゃあっ!!!!」

『さあ、ボンゴレリングを』


夕月に言われ、ツナはボンゴレリングを差し出した
夕月のおしゃぶりから黒い光が照射される

すると、リングから光の柱が伸び上がった
守護者のリングからも上がり、それがぶつかって空に弾けた
光の粒子が、美しく降り注ぐ
それを見ながら、ツナは感慨にふけっていた


「(アルコバレーノの印は8つ揃った
これで、ボンゴレ匣を開けることが出来る!)」

「これで本当に終わりですね、10代目」

「良かったな、ツナ」

「うん。ありがとうみんな」


獄寺と山本がそう言い、ツナも笑った
日吉と宍戸がツナの肩を叩く


「お疲れ、沢田」

「終わったんだな」

「うん。あ、そうだ。若くん。あの……俺……」


ツナが言いにくそうに視線を泳がせた
日吉はフッと笑って身を翻した
大方、マーモンの試練の時の事だ


「別にそんな顔をさせたくて言ったんじゃない
ただ、考えておいて損はないから言ったまでだ」

「………」

「お前には難しいかもしれないが、頭の片隅にでも置いておいてくれ」

「あ、若くん!」


日吉はそう言って越前のもとに向かった
宍戸も苦笑して後を追う


「何言われたか知らねぇが、まぁ少し考えてみろよ
アイツ、あれで結構いいこと言うからよ」

「宍戸さん!」


ツナは彼らの背を見つめてグッと拳を握った
考えなければならないことは山ほどある。だが、今は


「帰るか」

「うん」


リボーンに頷いたツナは、ハッとして夕月の姿を探した
だが彼女は、いつの間にか消えていた















―――――
―――

翌朝、ツナたちは並盛神社にいた
ツナは雲雀が来るか気が気でなかった
並盛を愛している雲雀が、離れないかもしれなかったから
無造作に置かれた10年バズーカを見つけ
ツナとリボーンを残し雲雀と謙也以外の全員が10年後に向かった
謙也が来ないことは知っていたが、やはり雲雀の姿は一向に見当たらない


「そんな……ヒバリさん」

「仕方ねぇな。もう時間だ。いくぞ」

「えっでも!!」


ツナを問答無用で向かわせ、リボーンはふと、1本の木に目を向けた
するとそこから桜が姿を現した


「そんな気配ダダ漏れでどうした?」

『いいえ、別に』


桜はリボーンを見下ろして指を組んだ


『10年バズーカを使うなんて………あなた達、10年後にいたの』

「………ああ。誰にも言うんじゃねーぞ。宍戸たちにもな」

『わかってるわ』


桜は目を伏せ、しかし拳を強く握った
凛と佇む姿に、リボーンは思わず息を呑んだ
どこか懐かしさを感じた


「(前にも、どこかで………)」

『リボーン。みんなに言っておいてくれる?』

「………何をだ?」


桜はふわっと笑った
その目は、どこまでも彼らを想っていた


『遠く離れていても、私は皆のことを思ってる
いつでも一緒にいるわ』

「!!」


桜の言葉にハッとするリボーンに桜は笑いかけた
そして、指からボンゴレリングを抜き取った


『リボーン。これを』

「………どういうつもりだ」


差し出された夜のボンゴレリングに、リボーンの眉間にしわが寄った
しかし桜は微笑んだままだった


『これから、きっと必要になると思うわ。だからこれを持っていて』


そう言われ、リボーンは渋々リングを受け取った
それを見て背を向け、桜は歩き出した

リボーンは彼女の華奢な背中に、決意を滲ませる声音で言った


「………必ず、伝えるぞ。だから待ってろよ、桜」


そして、リボーンもまた10年後へと向かった



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