頂を目指す二ノ姫X
□二度負けない
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不二は目を閉じてラリーをしていた
関東大会決勝の赤也との試合の時を思い起こさせる
赤也も目を見開いた
「(俺とやった時と同じだ……)」
「今の彼はとんでもなく神経が研ぎ澄まされている……
来た打球を素直に返しているだけなので、相手に次の手を読ませていません」
柳生がメガネを押し上げ冷や汗をかきながらそう言った
不二の打球を手塚が打ち上げ、それを追って不二が跳んだ
そのままスマッシュかと思いきや、
寸前でボレーに変え、ネットに当ててコートに押し込んだ
「《ゲーム不二5−5!!》」
さらに目を閉じたまま、
三連続でコードボールを狙ったかのようにポイントを重ねていった
周囲が呆気にとられ、桜も思わず感嘆の息を吐いた
『………まさに天才……ね』
「(アイツ……末恐ろしいわ)」
白石も思わず苦笑した
今の彼と戦って、勝てるかと聞かれれば曖昧に答えるしかなさそうだと自嘲した
桜は白石との試合の後、悔しそうにしていた不二を思い浮かべた
あの時の彼が、今に繋がっているのだと実感させられた
『準決勝のあの敗戦が…周助を更なる高みへ押し上げたわね』
「《ゲーム不二6−5!!》」
再度逆転した不二
周囲は一気に不二コールに包まれた。しかし、
「おいおい…
手塚国光ってのも意外と使えんぜよ」
軽い口調で仁王が頭を掻いた
そんな仁王に不二は淡々と言う
「君は……本物の手塚の足元にも及ばない
さっきのサービスゲーム…才気煥発で誤魔化したみたいだけど、
零式サーブ4本で勝ててたはずなのにあえて打たなかった
…いや、打てなかったんだ。それを見てピンと来たよ
君のイリュージョンも完璧じゃないんだってね」
『(………そう。周助が気づかないはずがなかった)』
3年間、手塚を意識し、共に戦ってきたからこそ分かる
彼がこの場面で零式サーブを打たないはずがないのだ
それを聞いた仁王はニヤッと口の端をつり上げた
「…プリッ」
「あ、あれは四天宝寺中の白石じゃ!?」
仁王の姿に、今度は白石が被って見えた
彼が放つ空気は白石そのものだ
「……セ、セミファイナルで不二を破った『聖書』!?」
「ククク…おまんは勝たさんぜよ」
しかし、不二は晴れやかな顔をして桜に視線を向けていた
桜はキョトンと見返して、思わずクスッと笑った
小さく頷くと、不二も笑った
仁王に背中を向けて言う
「悪いけど僕は同じ相手には2度負けない
第6の返し技『星花火』…」
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