頂を目指す二ノ姫X

□Dear Prince
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割れんばかりの歓声が巻き起こった
桜は、手塚に右手が握られ、同じように握り返した
菊丸が諸手を挙げてコートになだれ込む






「イエーイおチビーッ!!
ブラボーブラボーブラビアス!!」







「やりやがったなこの野郎ぉ!!」






桃城も、海堂も、河村も喜びを見せた
不二が手塚を見上げる


「さぁ行こう手塚、桜………日本一だよ」

『………ええ』

「…ああ」


その柔らかな声音と微笑に不二はクスッと笑った
この3年間でもほとんど見ることの無かった表情だ


「キミでもそんな風に笑うんだね」

「………!見なかった事にしてくれ不二」

「(甘いな………手塚)」


乾がビデオをとっていることに気付いて桜はフッと吹き出した
その事に疑問符を浮かべている手塚の背中を押す


「?桜」

『ほら、待ってるわよ皆』


コートに降りて行った彼らを桜は柔らかい目で見送った
誰もが笑っている

それは負けた立海も、幸村も同じようだった

リョーマは胴上げをされた後、幸村と握手をした
その幸村の表情は、どこかすっきりしていた
青学より早く、彼は立海のベンチに戻って来た


「……すまない、みんな」

「…幸村………部長…………」

「………素晴らしい試合でした。幸村くん」

「…………ああ。そうだろう、桜」


真田が突然桜を呼んだ
肩を跳ね上げた桜に彼らは真っ直ぐな視線を向けた


「……悔しいけど、でも、何かを見つけられた気がするよ、桜」

「………3連覇はならなかった
だが、これで良かったのだとも思うのだ
おかげで、大事なことを見失わずにすんだ」


幸村が、真田が、静かな声で言った
どこにも、悲壮感はなかった


「いい試合だったよ……たくさんのものをもらった
だからきっと、俺は君にありがとうって、言いたいんだ」

『わ、私は何も………』

「それでも、いいのだ」


晴れやかな顔をした彼らに、桜は戸惑いを隠せなかった
困った様子の桜に、仁王が喉で笑った


「そんな顔しなさんな。ほれ待っとるぜよ」

『……え?』


指をさされた方を見れば、彼らが、桜を見ていた
ドクン、と桜の心臓がひときわ大きくなった



思い返せば、長い道のりだった
手塚と出逢ってからだと9年、青学に入学してからだと2年と少し
たくさんのことがあった
ありすぎるほどだ



手塚と友になり、いつしか幼馴染になり


青学に入り、テニス部と出逢い


マネージャーになり、コーチになり


違う学校の生徒と仲良くなり


不安と孤独に打ちのめされそうになり


優しさと強さに泣きそうになり




そして、彼らとここまで来た






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