頂を目指す二ノ姫X
□Dear Prince
1ページ/6ページ
光が収まった
それと同時に会場の空気が変わった
さらに、リョーマの雰囲気もまた一変していた
そして、それだけではなく桜は理解した
『(リョーマの霊圧が跳ね上がった……それに)』
思わず上空を見上げる
心臓が早鐘を打った
仕方ないこととはいえ、覚悟は決めているとはいえ、
息をつかざるを得ない
『(賭けには負けちゃった…かな、南次郎……)』
目を瞑り、深く息を吐いた
サーブはリョーマからだ
幸村はラケットを握りしめた
「(天衣無縫の極みか。見極めてやろう)」
しかし、リョーマはサーブのモーションをやめていた
驚く幸村だが驚くべきは別にあった
トトン
背後で、ボールがコートをバウンドする音がする
いつの間にか、サーブが打たれていたのだ
「ねぇ……審判の人。コールまだ?」
『………!』
桜の目にも、映らなかった
審判も唖然としていた
「えっ?あ…いや。見えなかったもので…モ、モニター班っ!?」
驚愕の表情を浮かべる審判が叫ぶ
モニターを見ていた男性は、信じられない面持ちで口を開いた
「は、入ってます…」
「《フィ…15−0…》」
審判も信じられなかっただろう
しかしモニターにはリョーマがサーブを打ち、コートに入れた瞬間が映っていた
リョーマは飄々と言った
「しっかりしてよ。んじゃ少し遅めにいくよ!」
ドッ
「!」
「《30−0…》」
今度は桜も辛うじて目で追えた
だが気を抜けばすぐに見えなくなりそうだった
幸村は反応すら出来なかった
「《40−0!》」
「《ゲーム越前1−4!!》」
サービスエースで1ゲームとられてしまった幸村は呆然とした
何が起こっているのか分からない
サーブを打ってもリターンエースで決まってしまった
「こ、これが…無我の奥の最後の開かずの扉
『天衣無縫の極み』なのか―――」
「限界を超えやがった…
あの王子様はよ」
『………凄い…』
「《ゲーム越前3−4!!》」
リョーマは完全に幸村を押していた
神の子とまで言われた彼を翻弄している
.