頂を目指す二ノ姫W

□顕われた傷と
4ページ/4ページ




「………何だ、この違和感は」


気持ちの悪さに、手塚は拳を握りしめた
何かがざわめいている
そして、不快感が襲ってくる

何かが自分の中で欠落したような
何かで塗り固められたような
そんな気持ちの悪さ


「俺は……どうしたと言うんだ」


手塚の声は、彼らしからず震えていた























家に帰った手塚は早々に自室に篭った
居心地の悪さを感じたのだ
主に、祖父に対して

責められているように感じた
哀れまれているように感じた

無論祖父からそのような感情を向けられる覚えがない手塚は困り果てた

いや、本当は分かっていたのかもしれない
だが、認めたくないだけなのかもしれない

それでも、この嫌な感覚から逃れるためには受け入れなければならない

ベッドに座り、手塚は額を抑えた






「………俺は………………………何かを忘れているのか?」






そんな突拍子もない思いを、自分は受け入れなければいけないところまで来ていた

左腕から覗くミサンガ
これを、レギュラー全員がしていた
誰から貰ったのか聞けば、
大石、菊丸、河村、桃城からは1年の誰かに貰ったのだろうという返答があった
あまり気にしていない様だったが、不二、乾、海堂、越前は違った






「……僕も気になってたんだ
誰からもらったのか、分からないなんて………」




「一体いつからつけているのかさえ分からない
1年に聞いても見たが、誰も知らないと言っていた」




「………俺も、覚えてないっス
それにこれだけじゃなくて……タオルとか…お守りもあって」




「堀尾たちも知らないって言うんス
俺ももちろん知らないし……」







そんなこと、あるはずがない
しかし、誰1人分からない
この状況の受け入れ難い不可解さに、そろそろ頭が痛くなる
海堂の言うお守りなら自分にもあった
それも、少し古いものと新しいもの
どちらも、手塚の為に誰かが作ったものだった


「………一体…………何なんだ」


自分を襲う異常事態に、手塚は目を瞑った
到底受け入れきれない
だが、それしか方法が無い
もう、目を背けられない

そう覚悟を決めた、その時






「国光。電話よ!!」






一本の電話が入った





fin.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ