頂を目指す二ノ姫W

□顕われた傷と
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「弛まぬ努力が果たされ、全国優勝することが出来た
レギュラーが全力を尽くしたのは勿論だが、
全員の応援があってこその結果だと思っている
みんな、よくやってくれた」





「ああ。最近では都大会止まりと言われてきた青学だが、
こうして優勝旗を持ち帰ることができた
それも全国を2連覇した立海に勝利してな。アタシも鼻が高いよ!」





「……今日は3年の引退式を兼ねて祝勝会だ
河村のお父さんのご厚意で寿司をご馳走になった
全員心して食べるように!それでは油断せずに






乾杯!!






「「「乾杯!!!」」」






青学に集まった部員たちは、楽しそうに寿司にありついていた
今日をもって3年生は引退
部長である手塚も、2年生にその役職を譲り、渡独の準備をしなければならない
部長の任命はこの会が終わる頃にするつもりである
その為、全員気になるのかそわそわしていた

不二がクスッと笑って手塚の隣に立った


「みんな分かりやすいね」

「……そうだな。ところで、それは何なんだ?」

「聞きたいのかい?手塚」


不二の右手に握られているグラスに入っている物を見て、
手塚は思わず問いかけてしまった
そして次の瞬間には後悔した
不二の不気味な笑顔と、乾の周りに倒れる屍を視界に入れてしまったのだ


「もうそう簡単に飲ませられなくなるからな
改良版乾汁レボリューションを是非飲んでもらいたくてね」

「………もう……ムリ…………」

「また差し入れはするよ」

「…………結構……っス………………」

「………」


その惨状に頭痛を覚えた手塚は不二を横目で見た
彼は相変わらず爽やかな笑みを浮かべているが


「飲んだのか?」

「うん。なかなか刺激的な味だったけど、
青酢とかよりは普通に飲めるしおいしいよ」

「……………」


改めて不二の味覚を心配した手塚だった

ふと、不二から視線を外した手塚は彼を視界に映した
1年生と一緒にいるリョーマだ
その表情が何故か気に掛かった
手塚はリョーマに近づき声をかけた


「越前」

「……なんスか?部長」


低い声のリョーマに手塚は片眉をあげた
クールというよりは、どこか覇気が無いように感じたのだ


「どうした、越前。具合でも悪いのか?」

「……そんなことないっスよ………ただ……」

「ただ、なんだ?」


手塚の再度の問いかけに、リョーマは目を逸らした
言いづらそうに口を引き結ぶ


「………越前?」

「……………なんか、朝起きた時気分が悪くて…………」

「気分が?」

「………汗はかいてるし、おまけに変に心臓は速いし」

「!!」


それを聞いて手塚はハッとした
彼に起きた症状と同じなのだ
リョーマは深刻な顔をした


「なんだか……嫌な夢を見たんじゃないかって思ったんスけど……
でも覚えてなくて………嫌な感じが消えなくて」

「……俺と、同じだな」

「えっ……」


リョーマが手塚をまじまじと見た


「部長も……っスか?」

「ああ。まるで全力疾走したような汗と動悸
それに胸の奥が気持ち悪かった。お前もか、越前」

「……なんか、昨日のことを考えたらもう少し………」

「そうだな…」


その不快感に、手塚は顔を顰めた




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