頂を目指す二ノ姫W

□導かれた者と
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「ほんなら、笑っててや、“  ”」
『……笑って?』
「そうですよ
“  ”さんは笑っててください!」



「……なら、私から話してもいいでしょうか?」

「何だ、いやに積極的だな」

「………私が違和感を感じたことがあるのがここ最近で、
あなた方の様子を見るに一番少なそうだと判断したからです」

「ほう」


真田が腕を組んで木手を見据えた
全員の目が木手に向くと、彼は忌々しいとばかりに肩を落とした


「まず、私が最初に違和感を感じたのは……全国大会…青学との試合です」

「!!それは、俺達も感じている」

「うん。あの時………ベンチに座ってるのは竜崎先生で…
先生目がけて、ボールをぶつけようとしてたよね」


その話に佐伯が眉間にしわを寄せた
顧問が担架で運ばれていったときのことを思い出したようだ
それに不二は申し訳なさそうに眉を顰めた
木手も少なからず思う所があった様で口を引き結ぶ


「………それで、竜崎先生が比嘉中の顧問に怒った………けど…………」

「……なんか、違和感があるっス」

「……ええ。それには私も同意します」


苦い表情の越前に木手も頷いた
柳は難しい表情をする


「……青学5人と木手……か
ここまで合致するなら信憑性は高いな」

「他の部員は全く違和感を感じてへんかったん?」

「ええ。何が起こっているのか全くわかりませんよ」


白石の問いに木手は息を吐いた
眼鏡を押し上げ、鋭い目つきを見せる


「…あとは、ここにいる立海と山吹以外の学校で戦った、
あの焼肉店での時ですね」

「………このメンツで焼き肉食べにいったのかよぃ」

「ああ。準決勝のあとにな」

「へぇ。俺も焼肉食いたかったぜ」

「余計な事は言うな赤也」


真田が低く窘めると赤也は体を縮こまらせた
跡部が視線を落とす


「……確かに、違和感を感じるが……そこまで顕著ではないな」

「戦いに夢中であんま覚えてへんわ」

「せやなぁ。しかもごっついドリンク飲まされとったし」


忍足従兄弟の会話にほとんどが頷きを返した
しかし、ここで暗い表情をしている3人に気がついた


「どないしたん財前」

「海堂も…」

「長太郎も何かあったのか?」


その3人は焼肉バトルに参加しなかった後輩たちだった
財前が何とも気持ち悪そうに白石を見た


「…部長。俺ら、バトルを傍で見とったやないですか」

「せやな」

「………その時、何でか知らんのですけど…
この2人とずっと話とったんス」

「……なんかおかしなことあるか?」

「でも…初対面だったんです。財前くんとは」

「………ああ」


鳳と海堂は難しい表情を浮かべた

鳳と財前は初対面
しかも、海堂は両方と顔見知りとはいえ、全く話したことのない同士だ
海堂自身口数が多い方ではない
それが、引っ掛かりをより分かりやすくした

財前は視線を彷徨わせる


「………」

「…せやのに、何でかずっと一緒におったんっスわ
小春先輩もおったし、副部長もおったんに……
それに、俺はずっと……誰かに話しかけとった……
ずっとその人と……話してた気ぃするんスわ」


普段の財前とはかけ離れた頼りない、歯切れの悪い口調に白石は面食らった
彼がここまで深刻に言うからには、やはりこの違和感は本物なのだろうと漠然と思う

「関東大会…決勝まで上がってくる事を楽しみにしてるぞ」
『………ええ。必ず行くわ』
「きっとっスよ〜!!」



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