頂を目指す二ノ姫W

□導かれた者と
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すると、考え込んでいた千石が手を上げた


「あのさ、ちょっといいかい?」

「なんだ、千石」

「最初に言っておきたいんだけど、
俺の記憶も青学と関わってる時に違和感を感じたんだ
都大会と合宿だよ
あっくんもそうなんじゃない?
まぁあっくんは合宿来てないけど」

「………チッ。ああ」


舌打ちをするがそれでも頷く亜久津
この場に集まった時点で、彼もこの違和感の正体を何としても突き止めたいと思っているのだ
千石は苦笑して跡部たちを見た


「だからさ、青学に話を聞いたら早いんじゃない?」

「……やはりその結論に行きつくな」


跡部は息を吐いた
そして手塚に視線を向ける


「俺様たちも大体青学と関わっている時が顕著だ
勿論他にもある時があるがな」

「……うん。俺達もそうだと思う
ただ、俺は少し違うけどね」

「というと?」

「入院していた時にも感じたんだ
だから必ずしも青学って訳じゃないけど、一番多かったのは多分同じだよ」


話を聞いていた手塚たちは一様に難しい顔をした
不二は弟を見やる


「裕太はどうなの?」

「…俺は、1年の時は青学に通ってたけど、
そこで日常的にではないにしろ違和感を頻繁に感じてる
全部覚えてるわけじゃねーけど……
ただ、聖ルドルフに転校してからは全然だぜ」

「………越前はどうだい?」

「俺は……多分青学に入学してからっスね
それまでは多分こんな記憶の不自然さなんてなかったっス」

「俺もです。青学に入学してから」

「……越前と海堂は入学してからか………」

「お前たちはどうだったのだ?」


眉間にしわを寄せた真田の言葉に不二がうん、と目を開いた


「青学に入ってからより……1年生の秋ごろからの部活からずっと……かな」

「!なんだと」

「…そうだな。俺もそうだ」

「貞治もか」

「思い返してみれば確かに、部活で……
誰かと話したりしてた気が…する」


暗い表情の不二と乾に全員息を呑んだ
跡部は嫌な感じを覚えながら全く口を開かない手塚を見た


「おい。テメェはどうなんだ?」

「………」

「手塚?」


不二は、まるで何かに耐えるように拳を握り、
目元を険しくさせる手塚に首を傾げた
彼の尋常ではない様子に全員体を堅くする


「おい……どうした手塚…」

「………俺は…話を聞くに恐らく…
この中の誰よりも…違和感を最初に感じてから今までの時間が…長いだろうと思う」

「!それは、本当かい?」

「ああ……」


目をきつく瞑り、手塚は苦しげだった
信じられない、信じたくないと言っているような


「……俺は、小学校だ……小学校1年生………」

「そ、そんなに!?」

「……なんでそんな前なんだ?」

「わからない………だが、話を聞いていてこれだけは分かる……
俺は……部活の帰り道……隣に誰かがいた様に感じた
そこにだれかがいることが……当たり前に感じていたんだ
だからこそ、俺は……俺達は忘れている……」


手塚は息を吸い、そして誰もが認めたくない事を告げた






「俺達は大切な誰かを、忘れているんだ」



「そうだな
“  ”が笑ってると俺らも嬉しいぜ」
「……貴女は相手校ですが
どうしてかそんなことは抜きにして笑ってて欲しいんです」
「不思議だな。お前は
だがそんなお前だからこそ、俺らはそう思うんだろ」

『いい試合を………ありがとう』



fin.
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