頂を目指す二ノ姫W

□刻まれた時と
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「………俺達はあのバケモノに、虚に襲われたんだ
なら、知る権利があるとは思わないか」

《虚に襲われた理由は霊圧が高いから
それ以上もそれ以下もない》

「……なら!死神である君が僕達の傍に……
手塚の幼馴染になった理由はなんなんだい?」


不二が震える声でそう指摘すれば、彼女は息を吐いた
まるで鬱陶しいとでもいうように


《死神はいわば会社と同じでね
そういう仕事内容だった、ということよ
詳しい内容については話せないわ》

「………っ」


打てば響くような拒絶だった
先ほどまでの柔らかい笑顔を浮かべていた彼女と同一人物に思えないほど
まるで崖から突き落とされた様な、血の気が下がるような嫌な感覚が襲ってくる


「………随分と…態度変わるんすね」

《貴方たちが思い出さなければ……
このまま家に帰ってくれればこんな思いしなくてすんだのよ?
私もあなた達の前から姿を消すだけですんだ
本当………計算が狂うわね》


その時、初めて彼女の瞳に拒絶以外の感情が見えた
それは悲しみだった
どこまでも深く、暗い悲しみの色
手塚は思わず息を呑んだ


《………もう話は終わり?なら帰らせてもらうわ》

「!!」


冷たい色の目に戻った彼女は踵を返した
真田が身を乗り出し鋭い声を発する


「待て。まだ話は終わっていない!」

《終わったわ。もうこれ以上話すことはない》

「………いや。まだあるぜよ」

「ああ。まだだ」


彼女は動きを止めた
仁王と幸村の声に今までとは別の何かを感じ取ったのだろう
手塚たちもまた、彼らの違う雰囲気に動きを止めた


「……ねぇ“―――”
実は俺と真田と仁王はね。ある共通の夢を見てるんだ」

《………》

「その夢は曖昧での。全てをはっきり見とるわけじゃない
だが、はっきりしとることもある」

《……何が言いたいの》

「…実はその夢で、俺たちは見てるんだ
とある屋敷の一室で、数人の男たちが一人の女性の前で正座している
その男たちの中には、君が着ていた黒い着物を着た俺と仁王と真田がいる
そして……」





「お前とそっくりな顔をした女性と、何かを話していた」





《………!》


彼女は顔を向けた
その表情には驚きが見て取れた
信じられないと訴えていた
この機を逃すまいと、幸村が詰め寄る


「こんな不可解な夢を見てる
それも、俺達も君と同じような着物を着てる
それなのに、これが無関係だって言えるかい?

俺達に関係ないなんて、君は言えるのか!!」


幸村の叫びに、彼女は顔を背けた
何かに耐えているかのような、酷く苦しげな表情だった
ずっと、彼女にはこんな顔をさせ続けていた
だが、もう決めたのだ
はっきりさせなければ、前に進めない


「……話してくれ。お前が隠している事を
俺は……お前の力になりたいんだ」


グッと唇を引き結び、彼女は動揺していた
葛藤し、考えあぐねていた
どうしても自分達を遠ざけたいのだろう
だが、手塚たちとて引き下がるわけにはいかなかった
もう決めたのだ
誰に反対されてもいい





彼女とともに生きたいと





「“―――”……」


一歩、彼女に近づいた。その時、





奴等は来た









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