頂を目指す二ノ姫W

□刻まれた時と
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《………っ!!》






ウオォォォォオオォォオォォォン






その姿を見た時、彼らは叫んでいた


「!!虚!!」

「なんだこの数!!」


それは夥しい数の虚の群れ
今まで気づかなかったことが不自然なほどの数が空を覆い尽くしていた
だが、まるでそれを待っていたかのような声がした






「“―――”ちゃーん!!先やっとくよ!!」






「初瀬!」





その姿に、手塚たちは息を呑んだ
黒い着物を着た初瀬栞が、突然宙に現れたのだ
彼女の後ろを千石に負けない鮮やかなオレンジ色の髪の青年もついて行く
背中に大きな刀を背負ったその青年は、手塚たちの後方、
事態がよく呑み込めていない者たちを見るなり目を瞠った


「アブネッ!」


慌てて背中の刀の柄を掴んで引き抜く青年
だが、彼の視線の先に目を向けると、いつの間にかそこに彼女がいた


《私の前でバカなことを……愚か者》


そこにいつの間にか、あの黒い着物を着た彼女が刀を手に佇んでいた
桃城たちを襲おうとしていた虚を彼女が斬ったのだ
そのことに安堵の息を吐く
しかし、肝心の助けられた本人たちはこの事態を全く把握していないのだ


「さっきから、なんなんスか先輩たち」

「つーか何の話をしてんだよ……」


そう言う彼らだが、何かを感じ取っていた
その証拠に表情が強張っている
だが、それを説明している時間はない


「行くぞ」

「手塚っ」

「……ここにいては“―――”たちの邪魔になる」


静かに告げた手塚に苦い表情で頷いた真田は赤也の腕を掴み、そして柳生に押し出した


「真田くん?」

「一か所にいるべきだが、何やら気配を感じる」

「えっ」

「………真田の言う通りだな。誰か来やがった」


跡部はそう言うなり走り出した
それに真田と不二もついて行く


「副部長!!」

「………恐らく…四天宝寺だね」

「それと、不二の弟だ」

「だから不二先輩……」

「………っつーか…何でわかっちゃうんだよ………」


血相を変えた様子の不二に越前が合点がいったと頷いた
向日は説明できないこの状況に完全に混乱していて頭を抱えた


《………万物を映せ、朧月》

「閉ざせ」


その間にも、彼女と初瀬とオレンジ色の青年の尽力で瞬く間に虚が斬られていった
数はもう半数にまで減っている
彼女の刀は刀身が細く透明で、銀色の筋が一筋入っている
初瀬の刀も細身で刀身は漆黒。菫色の筋が二本入っていた


「……あの時と、同じだね」

「ああ………」


目を伏せた幸村は、突然弾かれたように顔を上げた
横に立つ柳を見ると彼も幸村を見て頷いた
頷き返した幸村はスタジアムの端へと走り出した
何が起こっているのか分かっていないジャッカルを丸井が強張った表情で引っ張る
それに全員続いた。すると頭上から


「な、何事ですか!?」

「う、嘘やん……」


跡部と不二に先導された者たち
四天宝寺に不二裕太
さらに比嘉中の木手永四郎
山吹中の千石清純に亜久津仁
さらに六角の佐伯虎次郎がそこにいた


「……って、何引き連れて来てんだよ跡部!!」

「うるせぇ!!」


彼らの後ろからも虚の大群がやって来ていた
と、そうこうしているうちに虚の鋭い爪がしんがりの真田に迫っていた
それに気づいた彼女もハッとして向かおうとするが、別の虚に阻まれる


《ちっ……》

「!!真田っ!!」

「副部長―っ!!」

「……っ!!」





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