頂を目指す二ノ姫W

□刻まれた時と
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一面に広がるバケモノの大群
この状況に恐怖が一気に身体中を駆け巡った
知らず知らずのうちに身体が小刻みに震える


「な……なんなんだよ………」

「………おいっ!!」


恐怖に身を任せている彼らに、跡部の鋭い声が響いた
跡部は険しい顔つきで、しかし動き出していた


「何してやがる!!逃げるぞっ!!」

「「!!」」


その声に弾かれるようにして、足を動かし始めた
そんな手塚たちを、上空の化け物は嘲笑うように見ていた



霊圧の塊を感じて来てみれば…


凄まじい霊圧を持った人間の群れだったな


今日ハ馳走ジャノウ


ギャギャギャ



「チッ。先行け日吉!!」

「あ、跡部さんっ!!」


日吉を押し出し、跡部が一歩前に出た
それと同時に手塚と真田もまた、自身の後輩たちを先に逃がそうとしていた
目の当たりにした跡部はこの状況でも微かに笑った


「はっ。後輩思いの先輩じゃねーの」

「お前もな」

「フン!これしきのバケモノ、食い止めてくれよう!!」

「真田っ!!」

「手塚くん跡部くんっ!」


幸村と白石が叫ぶ
手塚は後ろを振り返らずに叫び返した


「全員連れて逃げろ!!ここは俺達が!!」

「何バカなこと言っとんねん!!」

「君達もくるんだ!!速く!!」


逃ゲルンジャネーヨ


お前達は俺様の餌なんだからなァ



くわっと咢を開いて迫るバケモノ
その時、手塚を今までの比ではない頭痛が襲った
思わず地面に膝をつく
突然崩れ落ちた手塚に跡部と真田は慌てた


「おいっ!!手塚!!」

「何をしている手塚っ…………!!」


真田も目を見開き、頭を押さえた
手塚は、脂汗が噴き出るのを感じながら大きく脈打つ鼓動に全てを理解した


「(そうだ………あの時………………)」























―――――
―――


全国大会決勝後

手塚たちは観客が出て行くのを待っていた

スミレには先に帰ってもらうことにした
跡部の計らいにより、スタジアムを夜まで貸し切ったのだ
その方が、この人数でまとまって話しやすい
何より、逃げられないはずだ


「………いいんだな」


近づいてきた跡部に、手塚は神妙な顔をして頷いた
彼女は不二と幸村に捕まっており、困惑気味にそこにいた


「………このまま家に帰ったら、恐らく、もう機会はない…」

「………そうだな。今じゃなきゃだめだ……………いくぞ」


跡部の青い目が、手塚に向けられる
その真意に、手塚は拳を握りしめた


「………ああ」


手塚と跡部は、彼女に向かって歩き出した
それに気づいた彼女が目を細めて待ち受ける
青学、氷帝、立海のレギュラー部員がそこに揃っていた
だが、この集りの真意を理解している者は半分ほどだろう


「な、なぁ手塚。一体どうしたんだ?突然会場に残る、なんて」

「そうだよ。そんな怖い顔してさ」


大石と菊丸が困惑した様子で口々に言う
手塚は菊丸に言われて自分の顔が険しいことに嘆息した
どうやらかなり緊張しているらしい




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