頂を目指す二ノ姫W

□遠ざける壁と
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手塚の手が、彼女の腕を掴んだ
はっきりと、彼女は息を呑んだ


『!!』

「……それがお前の願いか?
なら、それを聞き入れる訳にはいかない」

「……そうだな。俺様も聞かねぇぜ」

「無論、俺もだ」

『……っ』


跡部が髪を掻き上げ、真田が目を吊り上げた
目を瞠る彼女に跡部はフッと笑い、さも当然の如く言い放った


「何を驚いてやがる
この俺様が自分の女が抱え込んでる事を見てみぬふりするわけねーだろ?」

「………桜は跡部の女じゃないけどね」

「なんだ幸村。文句でもあんのか?」

「あり過ぎて何から言っていいかわからないぐらいあるよ
まぁ、そんなことより」


幸村の双眸が桜を射抜いた
彼は常の通りの柔和な笑みを浮かべていたが、どこか怒りをはらんでいた


「俺は桜に……
大事に想っている人を見捨てるような男だと思われていることが悲しいよ
君にそんな風に見られてるなんてね」


はぁ、と息を吐いた幸村は、口角を上げた
自信に満ち溢れた笑みだ
怯んだように桜は一歩足を引いた


「俺は、桜のことを大事に想ってるよ
だからこそ、君の支えになりたいと思ってるんだけど?」

『………っ』


目を伏せた彼女の表情に浮かぶのは後ろめたさのようなものだった

それは当然のことだった
決して、彼らを巻き込んではならないと、堅く心に誓っていたから
何を失ったとしても、彼らを助けたいと、救いたいと思っていたから
だからこその感情なのだ

だが、それを見た真田が動き出した
彼女に近づき、息を吸った










「たるんどるっ!!」










『!!』







突然の大音量に桜は驚き、思わず膝を折ってその場に座り込んだ
腕を掴んでいた手塚も一緒に腰を下ろす
真田の近くにいた遠山が耳に手を当て顰めっ面をした


「な…なんちゅー声だすんや!!」

「……相変わらず……凄い声っスね」


越前も思わず渋面をつくる
しかし真田は全く意に介さず桜に続けて怒鳴った


「何を腑抜けたことを言っているのだ!!
お前という奴は、なぜそうやって自分一人だけで何もかも抱え込もうとする!!
全部を貴様だけで片付けようとするなっ!!」

『わ…たしは………』

「お前が俺達のことを心配していることはよく理解した!!





だが、俺達がお前を心配している事をなぜ理解しないっ!!!





その表情は、真田の言葉に刺された様な顔だった
俯いてしまった桜に、海堂が、切原が声をかけた


「……桜先輩…俺達に……先輩の荷物を持たせてください……
…頼りないかもしれないっスけど……」

「俺、マジで桜さんのこと心配してるんスよ!!
話してくださいよ!」

『……なんで………』


続く言葉は聞こえなかったが、恐らく「そんなことを言うのか」だろう
口を開きかけた手塚だが、その前に声を発した彼に驚いて口を噤んだ




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