頂を目指す二ノ姫W

□焦がれた夢と
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ずっと覚悟していた






彼の幼馴染になると決めた時から






必ず彼らを守り通し






そして







必ず彼らの前から消え去ろうと

























心の何処かでは、こうなることは分かっていたのかもしれない
だから今、心の中はとても凪いでいた
彼らと初めて会った時から、きっと、覚悟していたのだ
彼らを知っているからこそ、こうなることが


『(……私は…………嬉しいのかしら)』


罪に塗れた自分に優しい言葉をかけてくれる彼らの存在を喜んでいるのだろうか
だとしたら、なんて浅ましいんだろう
これほど恥じ入るべき存在を彼女は知らない
だからこそ、彼は自分に対価を与えたのか


『(………もう…終わりにしよう)』


ここでの自分の役割は、もう終わったも同然だった
ここから未来が変わってしまうかはこれからの彼らに掛かっている。それならば






「話すしかないっスね、桜さん」






「えっ!!」






『………』


思わずため息をついた桜は悪くない
突然、妖しげに笑う胡散臭い無精ひげの男が現れたのだから当然の反応だ
しかもそれが顔見知りならばなおさら

手塚はその声の主を見て目を見開いた


「貴方は……浦原さん!」

「……手塚。知り合いか?」

「ああ………桜の叔父だ」

「はっ?」


その異様な風体の男と桜が結びつかないのか全員の目が点になる
だが浦原は飄々としたものだ


「あ〜。そこから話さないとっスね
ここにいても何ですし、勉強部屋でもどうっスか?」

『………好きにして』

「ってことなんで、ついて来てください♪すぐそこっスから♪」


頭を抱えた桜は、しかしサッと身を翻した
手塚は慌てて追いかける


「桜!!」

『話してあげるから、ついてきて』

「「「!!」」」


その言葉に、全員我先にと動き出した
観念したような彼女だがようやく、話が聞けるのだ


「(………緊張、しているのか、俺は)」


震える拳。早鐘を打つ鼓動
どんな真実が待っているか分からない
もしかしたら、聞かなければいいと思うかもしれない
だが、それでも


「(やっと、桜に一歩近づける)」


それだけが、支えだった




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