頂を目指す二ノ姫W

□示された道と
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「……恐らく関係があると思うが…
東京のどこかに、究極の一芸入学の学校がある
その学園の卒業生は日本どころか世界で活躍する逸材ばかりと聞いた
財閥や企業の上層部がこぞって見学に行ったり、スポンサーになるそうだ
その学園の名前が……確かアリス学園だった」

「……すげぇ」

「そんなところが東京に……?」

「うおぅ。すごいな跡部君。世界が違うのによく知ってんね」

「………?」

「どういう意味ですか?」

『さっき言ったでしょ。要素の話よ
この世界を構成しているものじゃないの
でもまぁ、大まかに言えば同じ世界なんだけれどね』

「………さっぱりなんスけど…………」

「まぁ、説明も難しいんで何とも言えませんね
また今度説明することにしてはいかがですか?
それよりも今は、差し迫った状況の方を何とかしませんと」

『そうね……』


目を伏せる桜に手塚は寄っていた眉根をさらに寄せた
先ほどから彼女の表情はもどかしそうで、苦しげだ


「ねぇ桜ちゃん。差し迫った状況って?」

『………アリス学園はね
名目上アリスの保護を目的として運営されているの
アリスは裏社会では高値で取引されるぐらい貴重な人材、才能と言えるから』

「!!そ、それって人身売買!?」

「…………そんなことが……日本でも行われているんですか…」

「そうだよ。君達が知らないだけでね」


初瀬の静かな目に鳳は口を噤んだ
隣に座っていた日吉も思わず背筋を強張らせる


『アリスになった人間にとって、外の世界は平穏ではないわ
だからそれを理由に、学園に入学させようとする
そして一度入学すればアリスがなくならない限り
20歳になるまで滅多な事では学園の外に出る事は出来なくなる』

「家族と会う事さえ早々許されないよ
一度も外に出ることなく卒業を迎えた生徒もいるんだ」

「!!」

『……幸いまだ貴方たちのことは学園には知られていないはず……
重なり合っているとは言っても異なる世界……
けれど気づかれるのは時間の問題だわ
あなた達の力は隠し通せるほど弱くはないし分かりやすいものも多い
現に弦一郎の力はこれからもっと顕著になってくるはず』

「!!!何!?」

「だから消失させようとしてたのにさ
君達が術式を台無しにしてくれちゃったんだよね〜」

「………仕方ないやないですか」

「せや、忘れたままにはできへん」


ばつの悪そうに、しかしはっきりと財前と謙也が言えば
それには全員同意するかのように頷いた
初瀬は肩を落とし、浦原は薄らと口角を上げた
桜はため息をついて、でも、と切り出した


『このままほっておくわけにはいかないから……
多少強引でも、消さないと……』

「…………ねぇ、桜。何を隠してるのかな?」


唐突に、本当に突然に、佐伯がそう口にした
桜は弾かれたように佐伯に視線を向けた
佐伯は真っ直ぐ桜を見つめ、重々しく口を開いた


「……桜は俺達にアリス学園に行ってほしくないみたいだね」

『……言ったでしょう。入ってしまえば早々外には出られない
もうテニスも出来なくなるわ』

「!!」

「それだけが理由じゃないよね」

『……何が言いたいの?』


確信を持っているようなその言い回しに、桜は眉を顰めた
佐伯は常の柔和な笑みを微かに堅くさせた


「…………これが…アリスって奴なのかは分からないけど、分かるんだ……
それが正しいのか、嘘なのか………君が何を隠しているのか……」

『………』






「そのアリス学園に…





魂を分けた桜がいるんじゃないのか?」






「「「!!!」」」


その佐伯の言葉に誰もが目を瞠った。初瀬も、浦原も表情を変えた
桜は微かに目を細める程度だったが、それでも内心は動揺していた


『(………やっぱり、サエには………)』

「………つまり、そのアリス学園にも…
桜が予知、した奴らがいるってことか?」

「俺達みたいに、何かに襲われたりとかそういうことか?」

「命の危険に晒されて……それを助けようとして桜さんが………」




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