頂を目指す二ノ姫W

□示された道と
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もし、これが他の人間の言葉なら、どうにか取り繕って誤魔化していただろう
そうでなければ彼らの運命はまた、大きく変わってしまう
それこそ、世界を超えてしまうのだ
しかし、佐伯が言った言葉だからこそ、その重みは違う。彼は……


『……合宿の時から、もしかしたらと思ってはいたんだけどね………』

「桜?」






『サエのそれは……確かにアリスよ』






「!!」

「アリス!?」

『学園では直感のアリス、と呼ばれているものね』

「……そんな能力もあるんですね」

『ええ……アリスの種類は多種多様だからね……』


桜は観念したように息をつき、肩を竦めた






『サエの言う通り





アリス学園には魂を分けた存在がいるわ』






「桜様!!」

「……初瀬?」


気色ばんだ初瀬に不二は怪訝な顔をした
初瀬は低い声音で言う


「……いいんですか、言ってしまって」

『……私にアリスの力はないわ
サエが断定してしまってるんだもの。しょうがないわ』

「……自棄になってるんですか?」

『……そのつもりはないけど、そう見える?』

「まぁ。多少は…」

『………干渉値を超えない程度に話して納得してもらうほかない。だから、言うわ』


それでもだめなら、本当に最後の手段


困惑した様子の彼らを見回して桜は口元に笑みを浮かべた


『それで、他に言いたいことは?』

「!!言いたい事って」

『アリス学園にもう一人の私がいる
その理由は貴方たちの傍にいた理由と同じ
幻視で見た未来を変える為よ
だから貴方たちにアリス学園に行ってもらいたくない
これが貴方たちの力を消し去ろうとした本当の理由よ。納得した?』

「…………ああ」

『なら話は早いわ
もう一度術式を組み直すにしても時間がかかる
だから別の方法で、学園に気付かれる前にアリスを消させて』


怖いくらい静かな空気が流れた
誰も、何も発しない
彼女の雰囲気に呑まれ、言葉を忘れたかのように息だけをしていた
何かを言わなければならないのに、言えない

そんな痛い沈黙に、影のように控えていた浦原は
気の毒そうな顔をして手塚たちを見ていた
自分でさえも桜と相対し、その真っ直ぐな目と向き合えば身が竦むのだ
それを、たかだか十数年生きただけの子どもが耐えられるはずがない
あと少しでも空気が重くなれば、恐怖が勝って逃げ出してもおかしくないのだ
だからこそ浦原は口を挟もうと身動ぎした
彼らをこれ以上抑圧する必要はない

だが、彼らはまた浦原の予想を上回った










「…………断る」










fin.
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