頂を目指す二ノ姫W

□示された道と
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「さて、他に聞きたいことがありますか?何でも答えますよ」

『……ちょっと黙っててくれないかしら、喜助』


雰囲気を台無しにした浦原に桜は頭を抱えた
何でもなんて、このあと来る質問には答えられるはずがないのだ
そしてそれは案の定、幸村の口からもたらされた


「……それじゃあ、俺たちから質問があります」

「……どうぞ」

「ほれ、あの夢の話じゃ
死神姿の桜、おまえさんがいる夢を見るようになっての」

「その桜に、同じ死神姿の男たちが話しかけているんだ
その中には俺や真田、仁王の姿があった」

「一体これはどういうことなのか………知っているなら教えてくれ
お前に関係のある事なのだろう」


ため息を吐かざるを得なかった
浦原もあ〜、と呻きながら申し訳なさそうに頬を掻いていた
初瀬が呆れたように肩を竦める


「………ちょっと考えれば分かる事じゃない?」

「っスね。迂闊なことは言えないですね」

『……ごめんなさい。それについては今、私の口からは言えないわ』

「……なんでだ?」

『……そうね……………今知るべき時ではないからよ』


目を伏せ、指を組む


『未来はね、少しの変化で大きく変わるものなの
私が視た幻視はとても不安定で、それでいて強い強制力を持っているわ
だから私が、知るべきではない時に貴方たちに必要以上に情報を与えて干渉してしまうと
未来が大きく変わってしまう
しかも、過去と未来は一直線につながってる訳じゃない
絡み合い、枝分かれして形成されているの
だから一つの過去の行いが
全ての、それこそ一番幸福かもしれない未来にも影響を与えてしまう
そして予測不能な歪み、と呼ぶものが現れてしまう
それだけは避けなければならない』


口を引き結んだ桜
その表情はあまりにも苦渋に満ちていて、幸村は息を呑んだ
これ以上聞いてはいけない、と自分の内側が警鐘を鳴らし始めるのを感じた


「……それじゃあ、今聞くことは出来ないんだね」

「そうなりますね〜。聞いた後何が起こるか分かりませんし」

「出来ることならこのまま知らない方がいいっスね」


初瀬と浦原が口を揃えていうので柳もまた口を噤むしかなかった
何のことかよく分かっていない周りの者たちも、その深刻さに表情を暗くさせた


「……いつか、分かるのか?」

『………そうね……分かる時が来るかもしれない』


ちらっと、何故か千歳を一瞥した桜は目を伏せてそう言った


「それじゃあ、他に聞きたいことはないっスか?」


朗らかに言った浦原だが、佐伯は苦笑した


「って言っても、なぁ」

「いきなり答えられないとか……」

「あ〜、うん。それについてはマジごめん」


口を尖らせた切原に初瀬が頭を下げた
そして視線だけを真田に向ける


「でも、聞かなくていいのかな?あの不可解なことにつ・い・て」

「!!」


彼女の視線は跡部と真田に向いていた
心当たりがある。虚に襲われた時、不可解な現象を目の当たりにしたのだ


「……あの現象について、何か知っているのか?」

「うん。まぁそれは死神とは関係ない部類になるんだけどね〜
でも、これからの君達にとって重要な事だよ」


真っ直ぐな目をした初瀬に、全員居住まいを正した
桜は目を伏せ、しかしはっきりとした口調で話し始めた


『……貴方たちが目にした虚に起こった現象は
とある世界において定義づけされている要素の1つよ
この世界で言えば……超能力、とされるものの類に近いわ』

「………要素?」

「世界を構成しているもの、って意味かな?
でもまぁ根源的な意味で言えば全部同じなんだけどね
ほら、例えば日本では机っていう物体が
英語だとテーブルって単語になるのとある意味一緒だよ」

『そう。その力は、私たちの世界で言う霊圧
と呼ばれる力が変容したもので、アリスという名称よ』

「……アリス?」

「なんやそれ……」

「………心当たりがある」

「………跡部?」


静かに呟いた跡部に忍足が胡乱げな目を向けた
跡部は何かを思い出すようにゆっくりと口を開いた




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