夜空を纏う四ノ姫4

□チョイス
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『正一がすごくハマっちゃって
設定とか増やしてコンピューターゲームになっちゃったの
それでもっと、って自由度を上げていって


最終的には自走する巨大要塞が画面(ディスプレイ)の中を走り回ってたわ』


「……何しとんねん」


呆れた顔をした白石に桜はフフッと笑った
すると跡部が怪訝な顔をする


「だが、白蘭様はこれを現実にやる気なんだろ。どうするつもりだ」

『あら、簡単よ。白蘭がやるって言うんだからやるわ
もう対戦フィールドの準備も出来てるし』


ニコニコと微笑んでカップに口をつける桜に跡部は眉を顰めた
彼女がカップから口を離すのを待ってから言った


「……詳しいルールを聞かせてくれ」

『詳しいって言っても……微妙に違う色々なバージョンがあるんだけど…
兵士ユニットの数は開戦前にそれぞれ話し合いとかでチョイス(選択)するわ
もしチョイスされたユニットの数を揃えられなければ負けよ
フィールドの場所も開戦前にチョイス(選択)するの。広さは直径10km』

「かなり広いな……機動力が必要ってことか」


そこが敢て並盛町が入る大きさだとは口にしない
先程の彼女の言葉を聞けば理解できた

桜は人差し指を立てる


『ええ。基地ユニットは50立方メートル以下のものを自分で設計して自軍の資金で作って使用するの』


跡部が顎に手を当てて何やら考え込んだ
白石はゆっくりと確認するように口を開く


「つまりや……これを現実でやるっちゅーことは」

「兵士は白蘭様、それから真6弔花と俺達だな
簡単に言えば、戦争でいうところの局地戦を再現するってところか」

『そういうことになるわね』


コーヒーを飲みほした桜はフフッと意味深に笑った
訝しげな2人に桜は目を細めた


「なんや、楽しそうやな」

『ええ。きっと今頃正一たち、慌ててると思うわ』

「………そうだな
今の話からすれば、基地ユニットを自分達の手で作らなきゃなんねぇからな」

『ええ。たった10日でどこまで出来るか、楽しみだわ』






















―――――
―――


昼過ぎになり、桜は白蘭と共にチェスに興じていた
ナイトを出してポーンを取りながら、桜はニコニコと笑う白蘭に首を傾げた


『どうしたの?』

「いや、もうすぐだと思ってね」

『………そうね』


桜も目じりを下げた
跡部は情報部に、白石はブラックスペルのボスに顔を出していて
今この場にいるのは2人だけだ


「ねぇ桜。もし、国光くんたちがチョイスに出てきたら、どうする?」

『どうって?』

「いや、幼馴染でしょ
それに彼らは別の意味でも君と縁が繋がってる
例え彼らが覚えていなくてもね」

『…………今の私は、白蘭のことも』

「分かってるよ。大丈夫。僕が知ってるだけでいいんだ」


白蘭はそう言ってキングを桜に差し出すように移動させた
桜はキョトンと白蘭を見た


「君が望むなら、僕はなんだってするよ。そう、決めてるからね」

『白蘭……』

「君の笑顔を守ることが、僕の幸せだからね♪」


その笑顔に、桜の表情も緩んでいく
彼は、桜の為ならば、キングでさえ差し出す
それだけの想いだったのだ

桜は手をおろし、俯いた
白蘭はテーブルを回り込んで桜の頭を抱き込んだ


「大丈夫だよ桜。君は絶対に消させない」

『…………………………はい』


桜は白蘭の腕を掴み、胸に顔をしつけた




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