夜空を纏う四ノ姫4

□チョイス
1ページ/4ページ





桜はようやくベッドから降りられるようになり、白石と食事をとっていた
桜の反対側に座ってにこにこと笑う白石に彼女は困った顔をした


『ねぇ、蔵。そんな風に見られてると食べづらいんだけど』

「おお、スマンなぁ
せやけどようやく発作も収まって、起き上れるようになったからな
嬉しいんやわ。堪忍やで」

『もう………』


しかし、彼女の目の奥が冷え切っていることもまた、白石には分かっていた

原因も分かっている
幼馴染としていた彼が、彼らが裏切った
それが思いのほか彼女に傷を与えていた
それを、嬉しいと思えばそうなのだが……


「そういえば、景吾はどないしたん?」

『さっき白蘭に呼ばれて出ていったわ』

「そうか」


皿は空になり、桜はようやく一息ついた気がした
すると目の前にコーヒーが置かれる


「食後にどうや?」

『ありがたくいただくわ』


ミルクも砂糖もいれず、そのまま口にした
白石もカップに口をつける

すると、ドアが開いた


「おお、お帰り景吾。なんや難しい顔しとるな」

「……ああ」


眉間にしわを寄せた跡部は、そのまま白石の隣に腰を下ろした
腕を置き桜に身を乗り出すようにする


「……ラジエルの指揮下にあった侑士と精市から連絡はない
あの戦況から見て、死亡した可能性が高いとの情報部からの知らせだ」

『………本当にそうかしら』

「なんや。桜は違うと思っとるん?」

『ええ






2人はヴァリアーについた






空気が一気に重くなった
桜がコーヒーを流し込む音だけがする

跡部は表面上顔色を変えずに桜に問い返す


「……ヴァリアーに、ついた?」

『ええ。カンだけど』

「桜のカンはめっちゃ当たるからな」

「ああ。まるでボンゴレの超直感並にな。なら、疑う余地はねぇ」

『別にどちらでも構わないけれどね
邪魔する者は殺す。それだけだわ』

「……」

「……………そうか」


白石は黙り込み、跡部は辛うじて頷いた
彼女はもう、彼らが知っている彼女ではない
それを、いつも突きつけられるたびに、身体が硬直する
彼女の言葉が、何よりも辛い

白石はこの空気に耐え兼ね、桜に問いかけた


「ところで桜。チョイスってなんなん?」

「そうだな。俺達は説明を受けていない。一体何なんだ?」

『んーとね、簡単に言えばゲームよ』

「ゲーム?」

『ええ。戦争のゲームよ』


跡部と白石の動きが一瞬止まった
桜は思い出すように目を細める


『私と正一と白蘭が学生の頃、自作で作ったの
プレイヤーが2軍に分かれて戦場となる土地をチョイス(選択)し
それぞれ兵士ユニットをチョイス(選択)してチームを作る
そして本陣となる基地ユニットとその配置をチョイス(選択)して戦闘を行い勝敗をつける』

「そらまたシンプルやな」

『まぁ、元々は3人で暇つぶしに作ったボードゲームだったもの』


肩を竦めた桜に跡部は目を細めた


「勝者には特典があるのか?」

『ええ。勝者は報酬として敗者の所有物から欲しい物を何でも一つ
チョイス(選択)して奪うことができるわ』


ただ、と桜は苦笑した





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ