夜空を纏う四ノ姫4

□憐れな男
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桜と白石はビルの間を飛行しながら聞こえてくる音声に顔を顰めた
トリカブトがボンゴレ匣で応戦したツナに倒されたのだ

さらに猿――ツナに倒されたと思われていた幻騎士は山本武に苦戦していた
山本もボンゴレ匣を開匣したのだ
空に羽ばたく小次郎と名付けられた雨燕Ver.V(ロンディネ・ディ・ピオッジャ バージョンボンゴレ)と
刀を3つ背負った次郎と名付けられた雨犬Ver.V(カーネ・ディ・ピオッジャ バージョンボンゴレ)だ

さらに、雨燕は山本の持つ時雨金時と合体し、長刀となった

桜は神妙な声で『やっぱり……』と呟いた
それを聞きとがめた白石は疑問符を浮かべた


「…何がやっぱりなん?」

『ボンゴレ匣はアニマル匣が武器になるって言ってたでしょ?
しかも初代ファミリーの扱っていた武器ってね
初代の雨の守護者の武器は4つの刀だったから、やっぱりそうかと思って』

「………なるほど。ちなみにその初代の雨の守護者はどんな人やったん?」

『…剣の達人…ってところかしら
初代雨の守護者の剣は世紀無双と言われるほどだった
けれど本人は何より音楽が好きで、自分の刀は一振りも持ってなかったの』


だがある時、異国の友であったボンゴレT世のピンチを聞きつけた彼は
躊躇なく命より大事な楽器を売って武器と旅費にかえて助けに向かった


「……凄い、な」

『彼が楽器と引き換えに作った武器は三振りの小刀に一振りの長刀だったそうよ
だからまぁ、彼のボンゴレ匣は…』






すべてを洗い流す恵みの村雨と謳われた






朝利雨月の変則四刀!!!






「………成程な」

『………幻騎士はどうでるかしらね…』


桜は微かに苦渋の色を瞳に浮かべ
しかし入江のターゲットマーカー目指して飛び続けた




















《準備はできたぜ、幻騎士》



長刀を構えた山本はリラックスした面持ちで幻騎士に言った
彼の刀の青い死ぬ気の炎を見て跡部は眉を顰めた


「(………澄んだ青い炎だな…恐らく不二よりも…………)」

「景ちゃん眉間のしわ酷いよ〜。あ、マシマロ食べる?」

「……いいえ。結構です」

「ぷぷぷ。バトルに出られないのがそんなに悔しかったんだ〜!」

「うるせぇぞガキ」

「なーんですって!!」


突っかかってくるブルーベルに跡部は眉間のしわをさらに濃くした
スナック菓子を食べていた彼女の手がベトベトしているからだ
それを回避しつつモニターに視線を戻した



《よかろう。貴様を全力で葬るに値する剣士と認めてやる…
だが後悔するな。これでオレに情けはなくなる》



そう言葉を残した幻騎士のリングから禍々しい炎が溢れた
それは、ヘルリングからの炎だった

咆哮を轟かせた幻騎士の姿は骸骨の鎧を身に纏ったかのようだ
その醜悪な姿を目の当たりにして跡部の胸の奥に冷たいものが滑り落ちた


「(……あれが、ヘルリングの戦力倍加か……)」


《おでましだな》


《ハアァアアフルパワーだ。ヌウウ。力が何倍にも増幅する…!!
だがなぜだ…なぜこれほどの力をもつオレを認めてくれぬのだ…》


《?》


《なぜオレの方が優れているのにトリカブトが霧の真6弔花なのだ!!

神を!!白蘭様を守る霧の守護者は!!!

誰よりオレが適任だというのにいい!!!

なぜオレが奴らの部下なのだー!!》


「びゃくらーん。あんなこと言ってるよ」

「だから幻ちゃん好きなんだよ。人としての器の小ささがいいんだよな〜
小さい器は僕の手のひらにすっぽり入る♪」


笑みを絶やさない白蘭のその言いぐさに跡部は唇を噛み締めた
饒舌に喋る理性を失った幻騎士に目を眇める


「(憐れな男だな……)」




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