夜空を纏う四ノ姫4

□ファレノプシス・パラドックス2
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「そして僕は手紙のススメの通り海外の大学へ進み
白蘭サンと、そして桜と友達になる」

「!!」

「……桜、と」


神崎桜はアメリカの大学で白蘭と友人だった
白蘭の紹介で知り合ったのだと入江は告げた
そして、苦しげに言った


「皮肉なことに、人生で一番楽しい時だったよ…
チョイスもこの頃つくったんだ…」


だが5年が経ち、入江は全てを思い出した

あの恐ろしいタイムトラベルと荒れ果てたいくつもの未来を


「更にその元凶が白蘭サンで、自分の使命が彼を阻止することだとわかりパニックにおちいったよ…
何より、桜のことをどうすればいいか、かなり迷ったんだ」


入江がこれまで見た未来には一度も出てこなかった女性に彼は戸惑った
勿論そんな人間はざらだが、桜の立ち位置がとても白蘭に近かったことが入江の葛藤の理由だ
それでも、何とか彼女に気付かれずにスパイとしてやっていく覚悟を決めた
だが入江はまたもや愕然とした


「なぜなら考えられる全てのパラレルワールドの中で
今いるこの世界だけが白蘭サンに滅ぼされていない世界だったからだ」


その事実に、ツナは信じられないと声を荒げた


「だってパラレルワールドってたくさんあるんでしょ?」

「ここ以外の全ての『もしも』の世界が白蘭のものになっているということになるぞ!!」

「そういう事なんだろう」

「…ああ……5年前の段階で
白蘭サンの能力による世界征服を阻止できる確率は少なく見積もって8兆分の1…」

「…はっちょう!?」

「それはつまり言いかえれば
世界征服をされていないパラレルワールドの存在する確率ってことだよね」

「その通りなんだ」


不二の言葉に微かに頷いた入江は、奇跡的条件を満たす世界がここであると告げた
この世界が世界征服をされていない8兆分の1の世界なのだ


「つまり無数のパラレルワールドの中でもこの世界だけが
唯一白蘭サンを倒すチャンスのある未来なんだ!!」

「そんなことって…」

「それは未来のお前が過去のお前に指示をしてつくった未来だからなんだな」

「それだけじゃない…僕と綱吉君が唯一、偶然出会えた世界でもあるんだ」

「オ…オレと!?」

「中3になった君の自転車のパンクを僕が直すんだ…
だからこそこの世界はこの後…



奇跡的にボンゴレ匣がつくられる未来になるんだ…」



目を見開くツナの後ろで不二はチラッと指におさまるナイトリングに視線を落とした
だがそれに気づかずに、リボーンは表情を引き締めた


「それでお前は白蘭を倒すにはこの時代しかねえって言ってたんだな」

「ああ。他のどのパラレルワールドでも7は奪われ
ボンゴレファミリーも壊滅しているだろう…」

「壊滅…」

「そーいや、ヴァリアーとの戦いで現れた20年後のランボが」










「あなた達にまた会えるとは…
懐かしい…なんて懐かしい面々…」











「そ…そっか…あれは20年後のパラレルワールドでオレ達が死んでるから…!!」


だが、手塚は眉間にしわを寄せた
彼らの仮説に、一つの誤りを見つけてしまった

あの時、彼はこう言ったのだ










「…桜さん……それに裕太さん……
あなた方とまたお会いできるなんて…思いもしませんでした」











「(あのランボが来た未来は、この世界をベースにしていた…)」


そうでなければ、彼が裕太の事を、桜の事を知っているはずが無かった
だからあの未来は、全く違う枝葉の未来ではない
今、確実に目の前に迫りつつある未来なのだ

パラレルワールドと、一括りに出来るものではなかった
そしてそれは


「(……10年前の世界がこの世界に繋がっていることにも関係がある…)」


宍戸の存在を入江が知っていた
彼らの周りに存在する世界は、全くの無関係な世界ではない
それがどちらに転ぶかは分からないが






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