夜空を纏う四ノ姫4

□ファレノプシス・パラドックス2
1ページ/5ページ




「わからん!!極限にわからんぞ!!」


入江の説明に、とうとう了平が吠えた
その横では赤也が消化不良の顔をしている


「…何かこんがらがってきちまった………」

「パラレルワールドの知識を共有できるとはどーいうことだ!?
白蘭の何が一体スゴイんだ!?」

「さっきも話したように『もしも』で分岐するパラレルワールドには色々なパターンの未来が考えられる…」


それは軍事技術の発達した未来だったり、古代文明の発掘に成功した未来だったり
医療科学の発達した未来だったりと様々だ
本来、人はどれか1つの世界でしか生きられないし体験できない
だが白蘭はそれらの未来全部を体験して知っているということ


「つまりいろんな未来のいいとこどりができるってことだな」

「いいとこどり?」

「すべての『もしも』を体験できる……そういうことだ」


手塚の険しい口調にリボーンは頷いた
落ち着き払った声で続ける


「その知識と体験を他のパラレルワールドで使ってみろ。この世の中、情報に勝る武器はねぇ
誰よりも有利に生きられる。ありえねえことも起こせるってわけだ」

「(……日陰の身で姿を隠してたラジエルを発見したのも……)」

「何百という偶然≠フ発明なくしては生まれえない
《匣》を猛スピードで完成させることが出来たのも……」


全てのもしもを体験でき、知識を得られるが故
入江の傷の手当てをしながらリボーンは疑問を口にした


「だが白蘭が能力に気づいたのはほんの少し前ということになるぞ
わずかな時間でこれだけのことをするのは不可能だぞ」

「…それは…タイムトラベルで行き来するうちに
僕が過去の白蘭サンにまで能力に気づかせてしまったからなんだ…」


入江は白蘭の手の者に発信装置を仕掛けられ、それに気づかずに過去に戻ってしまった
その為、過去の白蘭にメッセージが届けられ
能力に気づかせてしまうという事態を引き起こしてしまった
その為白蘭は10年前から能力を使うことが出来たのだ


「入江!!その間お前は何をしておったのだ!!
白蘭の悪事を知りながらほうっておいたのか!!」

「ちょっ…了平さん」


詰る了平に赤也がつい抑える
入江は目を閉じて、口を開いた







「僕は記憶を失っていたんだ」







「!?」


山本とビアンキに支えられスパナたちも合流した

その入江の告白は衝撃的だった

8度目のタイムトラベルで未来へ行った時
10年後の世界で未来の入江が仕掛けた装置によって
タイムトラベルと白蘭についての記憶を5年間抹消されていたのだ





全ては白蘭を倒すために





「……未来の世界では白蘭を倒せない。未来の君はそう思った」

「うん。だから過去の僕をつかって過去の白蘭サンを消そうとしたんだ…」

「記憶を消したのは、白蘭に怪しまれないように、だね」


幸村と不二に頷き、入江は息を苦しげに吐いた
そして、と手塚の目を見る。手塚は深く頷いた


「構わない。もう話す時期だ」

「………うん」

「…何の事?」


首を傾げるツナに、手塚が鋭い目を向けた
息を呑む彼に淡々と告げる


「お前達に10年バズーカを当てたのは
未来の入江の手紙の指示で行動した入江と、宍戸亮だ」

「!!」

「なんとっ」

「宍戸さんが……!?」


驚愕に目を丸くするツナに、不二が澄んだ目を向けた


「今は全てを話す事は出来ないけど、僕達にはやるべき事があったんだ
その重要なプロセスとして必要だった
だから入江くんに接触した亮が、彼と一緒に10年バズーカを当てた」

「だが、入江は手紙の指示に従ったにすぎない
亮については、今はまだ断言はできないが」

「あ………」


苦しい表情をした手塚に、もう何も言えなくなってしまった
ツナの、超直感なのか、何かが聞いてはいけないと警報を鳴らす
獄寺も雰囲気を感じ取ったのか、入江に顔を向けた


「それじゃあお前は何も知らずにオレ達を?」

「……ああ…」

「未来の入江くんが残した手紙だからね
彼しか知らないマズいことが書いてあっただろうから、従うしかない」


グッと唇を引き結んだ入江は、だが息の混じる声を吐き出した



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ