夜空を纏う四ノ姫4

□夜空降臨
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「へぇ、来たんだね祇依チャン。ボンゴレリングを僕にくれる為?」

「(祇依?)」


軽く笑って桜を見る白蘭の言葉にツナは首を傾げた
聞き慣れない単語だが、桜は理解している
そして、そこまで深みに嵌まっていたのかと内心舌打ちした

だが、その憂いもこれで終わる
背後に現れた、この気配が教えてくれた







『……来たのね』







「!?」






「えっ……っ」






誰もが息を呑んだ
いや、辛うじて手塚や不二たちは今起こったことを正確に理解し、そして安堵していた
これでようやく、終わるのだ


「い…いつの間に………」


ツナは目を見開いた
10年後の、この時代の桜がか細い声を上げたのだ
驚くべきは、彼女を抱えた跡部と白石が、いつの間にか
瞬きの刹那に桜とユニの背後

木手と裕太の前に立っていたのだ

一体いつ動いたのかすら分からないその速さに誰もが言葉を失った

跡部の腕から降り、地面に両の脚をついた頼りない桜に眉を上げた


『随分と辛そうね……やっぱり嫌われてるのね』

『そうね……でも…これで良かったとも、思うわ』



大事な彼を、手にかけずにすんだから



音にならずに消えたその言葉に、桜は口角を上げた
10年後の桜の視線が手塚に向けられる。悲しげな眼だった


「!!だめだよ桜!!!」


何かに気付いた白蘭が近づいて来ようとした。だが








『悪いけれど白蘭。あなたの所にはもう戻れないわ』








桜の眼光が白蘭に突き刺さった
これまで彼に対して一度も見ることの無かった、冷たい目だ
白蘭の歩みが止まった

10年後の桜はおもむろに懐から4つの黒い匣と指にはまっていたマーレリングを抜き
また黒い巾着を取り出してその中から水色と黄色の石を取り出すと
後の全てを10年前の桜の手に平にのせた


『………お疲れ様』

『………ええ』


桜は微笑み合うと、跡部と白石に目を向けた
柔らかい、そして悲しげな微笑みだった
2人が言葉をかける前に、彼女は水色の石を握りしめ





次の瞬間掻き消えた





「えっ」

「桜ちゃん!!」

「10年後の桜さんが消えた!!?」

「何が起こった!!」


慌てるツナ達だが、手塚たちは泰然としていた
跡部が煩わしそうに声を上げる


「うるせぇ。静かにしやがれ」

『落ち着いて。この時代にいた私には退場してもらっただけよ
ちょっと特殊な方法でね。だから心配しないで』


その優しい声音に、ツナ達は泣きそうになった
これまでずっと緊張の中にいて黙っていた京子とハルは涙を零していた
あの冷たい声音の桜はいない。ずっと大好きだった彼女の声だ

それには手塚も不二も切原も内心グッときていた
それを察したのか跡部が満足そうに鼻を鳴らし、白石は表情を緩めた


「どういうことか説明してほしいな、祇依チャン」


低い白蘭の声が空気を固くした
桜を睨んでいる
裕太の肩が若干強張るが桜は構わずにっこりと笑う


『あの子があなたに言ったことは事実だけど、私たちは一つの存在よ。根本が変わる事は無いわ
だから貴方の元からあの子が離れるのは予定通りなのよ』


さて、と桜は掌に広がるものを整理しながら白蘭から視線を外した
巾着を木手が受け取り夜の匣兵器を跡部が持つとツナとリボーンを見た




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