頂を目指す二ノ姫

□都大会2週間前
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ストリートテニス場
買い物帰りの桃城はひょんなことから不動峰の神尾とダブルスを組んで試合をすることになった。対戦相手は端正な顔立ちの偉そうな態度の少年と、彼につき従う寡黙な大男。尊大な態度の彼はラケットを肩にかけ余裕の表情だ。

「おめーらにサーブやるよ。かったりーから一球勝負な。よーし。後は任せた樺地!」
「ウス…」

樺地と呼ばれた大男にそう言って彼は腰を下ろした。明らかに二人を歯牙にもかけていない余裕な態度で、それを見た桃城と神尾は真剣な表情になった。

「(マジでやってやるか…)」
「(ああ)」

神尾のサーブで試合は始まった。ボールは後衛の樺地へと向かう。樺地は顔色を全く変えずに強烈なショットを返してきた。

「あ――っ速い!いきなりサイド抜かれた!?」
「ナイス樺地…なーんだもう決まっちまったのか!」

しかしここで神尾が黙ってはいない。凄まじいスピードで桃城が取れなかったボールに追いつき打ち返した。

「リズムを上げるぜ♪」
「すげぇ。あの距離を追いついた!?」

神尾は前衛の尊大な彼へと狙いを定めてボールを打った。ボールは彼の顔の横ギリギリを抜けて行くが、彼は全く動かずにただ口を開くだけだ。

「とれ樺地!」
「ウス」
「なっあれを後衛が取るなんて…」
「うろたえるな神尾。チャンスボールだ!」

桃城は樺地が打ち返してきたボールを得意の技で返そうとネットに詰めた。高く跳躍し、狙いを定める。

「飛んだーっ!!」

「おおおっ」

桃城のボールが横を奔り抜けるのを少年は冷静に分析していた。

「(ダンクスマッシュか…………こいつ、一丁前にこの俺を挑発してやがる)いけ樺地…」
「ウス…」
「!?」

樺地は彼の言葉を聞き、両手でラケットを掴んで着地した桃城に強烈な一打を喰らわせた。


「ああ モモシロ君!?」


「ぐはっ…」

杏の声が響く中、桃城が悲痛な声を上げた。少年も当たり前という表情で目を瞑っていたが、

「何っ!?」
「(こいつ…)」
「すごい。執念で返してたっ!!」

ボールは緩やかに弧を描いてネットを越えて行った。すかさず樺地がネットに詰めるが、

「やめろ。もういい樺地…」

少年が静かに制止し、樺地は忠実にピタリと止まった。フッと鼻で笑った少年は余裕の目を桃城に向ける。

「今日は負けておいてやるよ。キサマ名前は?」
「青学2年 桃城武ヨロシク!そういうアンタは?」

咳き込みながら名乗った桃城に少年は一瞬驚きの表情になった。

「(……成る程…アイツの……どおりで…………)」

しかしすぐに不敵の笑みに変わる。フッと鼻で笑い、悠然とした態度で口を開いた。


「氷帝学園3年 跡部景吾」


「待てよっ不動峰中2年 神尾だーっ!!」
「てめえにゃ聞いてねぇだろ」

不遜に言い放ち、跡部は樺地を引き連れてストリートテニス場を後にした。










『相変わらずね…』

一部始終を上空で見ていた死神姿の桜は、腰に差した鞘を無意識に撫でていた。虚を倒しに来てみれば何故か桃城と跡部達が試合をしていて、つい見入っていた。と言っても跡部はボールに触りもしていないのだが。

『さっきの虚はここに引き寄せられていたのね。そろそろ危ないな』

険しい表情の桜は言い争う桃城と神尾を眼下に見下ろし、すっと跡部の後ろ姿を目で追いかけた。

『……なんにしても、桃は練習量増やしましょうかね』

意地悪く笑って桜は部室へと瞬歩で戻って行った。










「……………」

しかし、やはり気付かなかった。その姿を見ていた者がいたことを……



→atogaki
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