捧げ物

□黒執事U
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「♪〜♪」

昼下がり
森とも言わないファントムハイヴ家の庭

「シエルはいるかな〜♪?」

鼻歌を口にしながらスキップで先へと抜けて行く。

「クロードには黙って来ちゃったけど別にいいよね〜」

やっと庭らしき庭園に出てアロイスはふと足を止めた。

「・・・・・別にあいつに黙って来たって構わない・・・・・・・・・・最近はシエル、シエルってッ」

手に力が入り短パンを握り締め、言葉にならない怒りを堪えていたその瞬間

「あれ?お客さんですか?」
「!」

急に声をかけられ顔を上げたが、上げたと同時に何か得体の知れない液体が顔に飛んできた!!

「うわ!!」
「え!?あぁーーー!!除草剤がまた噴き出してるッ!」
「何!?これ、気持・・・ち・・・・・わッ」

変な臭いが漂い、目の前がどんどん暗くなっていく・・・・・



「クロー・・・・・ド」










次に目を覚ました時には天井が見えた。

「・・・・・・・・・・」

起き上がり、回りを見渡す・・・・・

「!?」

バッと自分の姿に目をやる。
いつもの大きなリボンは首に巻かれてなく紫のジャケットも着ていない・・・・・
一言で言ってしまえばYシャツ一枚なのだ。
ズボンと靴下もはいていない状態。
唯一の救いは自分のではないが太股まであるTシャツだけだった。

「何だよ・・・・・これ・・・どこ?ここ・・・」


「あ!起きましたか??」

声のした方に顔をやると片手にコップを持っていて首に麦わら帽子をぶら下げている、黄色髪の少年がドアを開け、こちらに歩み寄って来た。

「誰?・・・・・どこ?」
「あ!僕はフィニって言います♪この屋敷で使用人をやってます、ここは僕とバルドさんの部屋です!」



あぁそうか、さっきやっと森を抜けて、庭園に出たら、こいつが除草剤を俺にかけて・・・・・自分の状況を理解し、少しホっとする。
だが、本来の目的を思い出し、ニコっと声をかけた。

「ねぇ、シエルはいる?」
「え!?坊っちゃんですか?今はお仕事でロンドンまで行っていて、来週まではお戻りになりませんよ?後、バルドさんとメイリンさんと田中さんも今日出掛けていて遅くまで帰って来ないので今、この屋敷には僕一人です!」
「あっそ・・・・・」

暇潰しにシエルをいじめに来たのにこいつしかいないなんて、一気に気分が下がった・・・・・

しかし屋敷に帰ろうとも思わない

今、あの屋敷には帰りたくない・・・・・。


「どうぞ、お水です」
「あぁ」

コップを受け取り、一口口にする。

「あ、お洋服は今洗ってほしてますので」
「え・・・・・ありがとう」
「あの、横のタオル取ってもらえますか?」
「はい」

少し濡れているタオルを手渡し、コップを横の棚に置く。
すると棚には小さい鍋の様な物がポツリと置いてあった。

「・・・・・・何これ」
「お粥です!食べますか!?」

てきぱきと動き、れんげでお粥を少しすくい、手を添えてフゥーと二回ぐらい息を吹き掛けアロイスの口の前に運んだ。

「どうぞ♪」
「ッ・・・・・」

アロイスは頬を火照らせ、運ばれたれんげを口にする。



・・・・・・・・・・・・・・・まずい


ニコニコと次の一口を救っている、こいつの姿を見ると・・・・・まずいとも言えない・・・・・・・・・・・







俺は今何を思った?



まずいなんてさっさと言ってやればいい。
それでそんなドロドロしたのなんて下げさせればいいじゃないか・・・・・・・・・・



なのに・・・・・





クロード以外に優しくされて





俺は



「・・・・・・・・・・・」
「どうかしました?」
「・・・・・・んで」
「え?」




「何で優しくするんだよ!?」

「名前も正体も何もかも分からない奴に何でこんな接し方するんだよ!!気持ち悪いッ」

「そもそもお前の主人に会いに来た奴なんだからもっと警戒しろよ!?敵だったらどうするんだよ!!」










最後にギロリと睨んでやろうと顔を見たアロイスだったが逆にぎょっとする光景が目に入った。



フィニが悲しそうにアロイスを見つめていたのだ。

「な!・・・・・」

その表情を見て動揺するアロイスに次の瞬間、腕を掴まれそのままベットに押し倒され、唇を奪われる。

「!?・・・・・ん、ぁん!・・・・・」

激しく舌を吸われ、息が出来ずにアロイスの口の隙間からはよだれが滴る・・・・・

「あ・・・・・はッ・・・ハァ」

やっと唇が離されたと思いきや今度はおもいっきり引き寄せられ力強く抱き締められた。

「お!おいッ!!やめ



「似てるんです」

耳元で囁かれ、背中に鳥肌が走る。





「昔の僕に」










「帰る家も」
「仲間も」
「自由も」





「何もかもなかった僕に」

「貴方の姿を見て」




「だから優しくしたいんだと思います」

優しく微笑むフィニを見て、アロイスはボッと顔から湯気が出てくるんじゃないかと思うくらい耳までが赤くした。



「ッ・・・・・・・・・・」





「・・・・・・・・・・・・フィニ」





「言わなくても・・・・・分かるだろ?」



「・・・はい」










その後、二人がどうしたのかは言うまでもない。

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