BOOK

□=<SUICA>=
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君がスイカなら
僕はメロンでいいと思ってた



それが嫌になったのは
今から三時間前のコト。





「うわぁー最悪。雨降ってるし…」


「私、傘あるよ。貸そうか?」


「お!マジで?
 …でもお前どうすんの」


「走って帰る。」


「そりゃ、駄目だろ
 風邪引かれたら困るし。」


「バカは風邪引かないから
 安心して。」


「おう!そうかー?って…
 違う、違う!」


「それに私、バスだし。」


「じゃあ…
 バス停まで一緒に行こ。」


「…嫌だ。」


この瞬間から
僕は君のスイカの皮に
なりたがって
いたのかもしれない…。








「雨、止みそうにないし
 バス停まで一緒に行こ?」


「…い、嫌だ。」


「なんでそんな…
 そんなに俺の隣嫌?」





ある意味、嫌だ。

君は何も知らないから
そんなことが
平気で言えるんだよ


何も意識なんてしてないから、
言えるんだよ。





僕はメロンでいいのに。










「私は雨の中を
 傘もささず、走ってみたい
 そんな気分なの!」


「どんな気分なんだよ…。」



下足ロッカーから
出て来るみんなが
僕と君を見ている気がした

一つの傘に、男女二人。





勘違いされて
君に迷惑をかけるくらいなら
この雨の中、

僕は走りたいのです。








「このままじゃ
 もっと酷くなるかもよ?」


「酷くなる前に帰りなさい!」
「お前がな?ほら、入れ。」



そう引っ張られ
掴まれた右手を…

僕は汚いと言われてもいいから
一生洗わないと心に決めた。








「…ただ、
 バス停まで歩くだけだ。
 周りの目を気にしてるなら
 明日どうにかするし」


「…どうにか、するんだ?」





僕は何を言ってんだろう…


メロンごときが
スイカ様に盾突くなんて

スイカ様が
メロンを蹴飛ばすのとは
訳が違うよ。








「お前次第ではな。」



蹴飛ばされたー…












徒歩 約10分。





僕はなんだか
疲労感でいっぱいだ

きっと世界一まっずーい、
メロンになってると思うよ。



食べようと思うなら
あと約1時間くらいは
君の隣に居させてほしい








「バス停着いたよ
 本当に傘、
 借りちゃっていいの?」


「いいよ。」



こんなシナシナメロンの
傘で良ければ
いくらでも差し上げますとも、
スイカ様…。







「サンキュ、明日返すから。」



さりげに約束してかないで、
期待しちゃうから。

スイカの皮になっちゃうよ?





「うん。」


「じゃあ、また明日。」


その明日という言葉に
期待しちゃうのは
僕だけなんだろうな…。





「ばいばい。」

なんでだろ…、泣きそうだ。



「ちょっ、どした!?」


「何でもない…
 水溜まり見ると涙が出てくる
 アレルギーなんだ。」


「どんなだよ、
 すげぇ嘘下手だな。」


「嘘つきは
 ドロボウの始まりなんだって
 私はもうドロボウの卵だよ。」


「まだ生まれないなら
 やり直せるって!」



ドロボウの卵だよ、
ドロボウの卵だからこそ

僕は君という
スイカの皮を狙ってるんだよ。




 
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