BOOK

□star dust...@
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    T.秘密ゴト





 「あ、流れ星…」


 いつかの君が指差した
 生まれたばかりの紅い星。

 君だけに姿を見せた紅い星…


 この僕が振り返った時には流れ朽ちて
 暗い闇へと消えていた。



 君に見えて
 僕には見えない紅い星…

 それは君と僕の間にできた初めての、
 小さな些細な秘密ゴト。










    U.距離感





 君にあって僕にない
 僕にあって君にないものは

 なにもない

 ふとそう思った



 君には大きな夢がある。

 好きな人と結婚する夢
 広い舞台で歌を歌う夢

 他にも君は
 きっと沢山のものを持ってる





 なのに僕には何にも無い。

 大きな夢もなければ、
 良いところもとない。


 僕から君に足りないものを
 分かち合うことすら、
 これじゃあきっと出来ないね。



 補い合う友情が必要なのだと
 君は言っていたのに

 僕は土に埋もれたまま
 身動きひとつ取れないで、
 君から逃げる方法だけを探してる。



 まるで漆黒の夜に
 屑として投げ出された
 あの紅い流れ星のように





 一度、手放した君の手を
 握り締められたなら
 戻れるだろうなんて…

 流れ堕ちた星に
 願い事は何度もできないのに、

 僕はなんて
 自分勝手なんだろう。


 僕はなんて
 残酷な奴なんだろう。



 君の持っているものが
 羨ましいからって
 君を嫌うのは大きな間違いだと、
 分かっているのに。



 分かっているのに、

 君と距離を置きたがる
 僕がここにいる。





 仲良くしてたい
 友達でずっといたい
 君の相応しい人になりたい

 そんな気持ちが今、
 鋭いかたちで牙を向く。



 一歩、二歩、三歩。

 僕の足は後ずさる



 僕と君の距離は
 正確に、確実に、遠退いていた。










    V.恋人





あの人は君の恋人…

僕がそのコトを知ったのは
極最近だ。


噂に因れば、
もう二週間にもなるらしい…。

君と距離を置く前から
その恋人が居たことになる。


“僕の方が…
 その恋人よりも
 君を知っているのに。”

そんな感情と共に
浮かんで見えてくる
僕の知らない君…



あの流れ星が流れた
あの日から…
壊れはじめた君と僕の友情関係。

それが
何もかもを指している、
そんな気がした…。


ううん…違う、
君の隠し事が
何もかもを指してる。

それを知ったからと言って
どうするというわけでもなく、
僕はただ、泣いた。


このナミダに理由はない、
そう思うと増す増す
胸の痛みは増した。


…なんでだろう?
これは何の痛みなんだろう?


どうしてこんなにも
涙が溢れて
止まらないんだろう…か?


“どうして君は
 僕に隠し事をしたんだい?”

聞きたいことは
山ほどあるのに、
君に逢いたい気分には
なれないや…



なんだか僕は…
酷く傷付いてるみたい。

例え、その理由が見えていても
認めたくはなかった…


それは
僕という小さな人間の、
孤独な足掻き。
    W.偽り


白い吐息に乗せた
何気ない鼻唄…

妙に寒い今日だから
マフラーに顔を埋めて
泣けた…


それを僕は
鼻唄だと嘘をついた。


なんて分かりやすい
間抜けな嘘だよと
思うかもしんないけど、

強がってないと
ダメだったんだ、許してね…。


そう心で言って
好きでもない彼女の肩に
頭を乗せた。



優しい彼女は
僕を一瞬でも本気に
しちゃうかな…?

それはそれで
いいかもしれない…

君を忘れられるのなら、
いいことかもしんない…。



俺は最低だ。

関係のない彼女を
未知ずれにしてしまおうと、
利用する…酷い奴…。


いつの間に、
こんな人間になったんだろ?



幼い頃は
何気ない物事、
一つ一つに純粋で

世界はいつも
色鮮やかに輝いて見えてた…。

それが今じゃ
モノクロの着飾った
ゴミの世界にしか見えない…


闇に触れ
人の偽りを知り
騙すことを知った僕らには
色なんて、在っても
無意味なんだと思う。


そう醒めた口調で
僕が言うと、
いつも優しい彼女が泣いた…

僕はかわいそうだと…
泣いた。


そんな彼女に僕は…


気もない、キスをする…。
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