BOOK

□star spangled...A
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    T.恋路


「私…気付いたんだ、
 貴方が好きなんだって。
 だから、あの人とも別れて
 貴方に会いに来た。」


突然の君からの告白…。

僕はそのコトバに
残酷ながらも揺れていた。


彼女という存在があると言うのに…
僕は残念なことにも
揺れ悩んでいた…。


けど、やっぱり…僕には
彼女しかありえない。



君にあの綺麗事が話せるかい?

僕だけを見つめ、
愛し見透かすことが出来るかい?

…きっと無理だ。


君に彼女の替わりは
きっと出来てもできない。

そう思うとすぐさま君と会って
その告白の返事が
したくなった。

この気持ちが
揺さ振られる前に、
今の気持ちを言いたい…


「彼女が好きなんだ」って
「愛してるんだ」って
君にぶつけたい…。


「僕にも
 君以外の人を愛すことが
 できるんだよ」って、

正々堂々と君に伝えたい。



夕闇に包まれる無人の校舎裏、
僕は君になにもかもをぶつけた。

そして君も…


「貴方に彼女がいることは
 分かってた…。
 それでも私、貴方が好きで
 そりゃ何度も諦めようとした、
 けどダメで…。
 今だって貴方といると
 ドキドキする…
 貴方に彼女が必要なように
 私には貴方が必要なの。」


そう言って僕に抱き着く君を
振り払うことが
なんだかできなかった…。


「ゴメン。」


そう言うしか僕には
できなかった。

…慰めの一つもできなかった。

「本当、ゴメン…。」
    U.残酷


夕闇も落ち、
真っ暗闇の世界に
放り出された月が
僕らを見つける…。

本当…タイミングの悪いこと。


「新?」

そう僕の名を呼ぶ、
君の声…


「…何してるの?」


僕は悩んだ…言うか言うまいか。
けど、彼女に変な誤解は
されたくない。

でも沈黙は…流れる前に
彼女が切った。


「…寒いし、帰ろうよ。
 そこのあなたも
 寒いでしょ?」


一体、彼女はこの状況を見て
どう思ったんだろう…

なんだか…彼女の優しさが
鋭い棘のように見える。


君に自らコートをかけ、
君を支える彼女の優しさは
何の合図?

僕はひたすら
彼女の背中を見つめた。


何故だろう…?
彼女の背中が小さく感じる…。



その後、
僕らは君を家まで送り届け
長い帰路についた…。

暗い闇の中でたった二人、
僕と彼女だけになった。


僕はさりげなく声をかける…


「紗矢香のこと、
 送ってくれてありがと。」


すると、君は言った。

「下の名で呼ぶんだ…?」


その言葉に
僕はやっぱり誤解していると
感づいた。


「…友達なんだ。
 下の名で呼ぶだろ?
 心配しないで、
 紗矢香にそれ以上の感情なんて
 持ってないから。」


「心配なんて、私してない…。
 信じてるから…新のこと。」

そう言う君の肩が
震えて見えた。

「嘘つき。」

僕はぽろり、
小さな声で言ってしまった…

多分…
君にも聞こえたんだろう…、
彼女の足が止まる。


「…嘘つきなのはどっちよ…。」


「え?」


「私…、何も聞いてない。
 告白されたならされたって、
 言ってほしかった。」


「言ったって…」


「意味ないと思った?
 傷付けると思った?
 …そんなの全部、
 逆効果だよ!」


息を整えた彼女が
最後に言った…

「…何にもない方が寂しいし、
 辛いに決まってるじゃん…」
今までに彼女の涙を見たのは
3回ぐらい…。


1回目は僕の初恋を喜んで
泣いてくれた。

2回目は僕はかわいそうな奴だと
慰め、泣いてくれた…

そして今、彼女は
傷付き泣いている。


そういえば
よくよく考えると彼女は
自分のことじゃ、
なかなか泣かない。

いつだって
僕の為、人の為に泣いていた…


その彼女が今、
誰かの為じゃなく泣いている。

僕は…
足早にその場を去ろうとする
彼女を後ろから抱きしめた。


「ゴメン…。
 …何も言えなくて
 …黙ったままで、ゴメン。」

そう言いながら
彼女を強く抱きしめた。


優しい彼女は
きっと…「いいよ」と言…?


「嫌!」


「えっ?」


「絶対許さない!
 …な〜んて、いいよ。
 その代わり
 次は無しだかんね!」


初めて無邪気な彼女を
見た気がする…

僕は素直に、
彼女を“可愛い”と思った。
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