BOOK

□My life no fiction
2ページ/3ページ







3.lackluster


lackluster―‐
意味は“輝きのない”

多分、今の僕に
一番相応しい言葉だろう…。


輝きのない、人生に
輝きのない、命。

悲しすぎるほど
お似合いの言葉…、
似合い過ぎて…涙が出る。



僕の命は
確実に尽きてきてる。
そう、時間の超過が
身体の異変と共に
知らに来るのだ…。

分かってる…
分かってるからっ…
そんな知らせ、くれなくていい。


…時々
小刻みに止まるんだ。
脈打つ、この鼓動が。

その度に二、三秒だけど…
あの世が見える気がして…。

見えるといっても
暗い闇なんだけど、

色んな人から
“こっちへおいで…”って
誘われるんだ。


僕はその度…
“嫌でも逝くよ。”って
答えようとするんだけど、

止められるんだ。


髪の長い…
顔の見えない女の子に、
“逝っちゃダメ”って
止められるんだ。

その声に僕は何度も足を止め
来た道を戻るんだ…

それが誰なのかは
わからない…けど、
すごく感謝してる。


また今日を味わえるのは
多分…
その子のおかげだから。

夢の中の
知らない子だけど…
僕は彼女に“ありがとう”
が言いたくなった。



ひねくれ者であるこの僕が、
“ありがとう”だなんて…
僕は久しぶりに
顔を誇らばせ、笑った。


僕の命は
残りあと、四日。





4.meet


「ごめんなさいっ…、
 ケガとかしてません…?」


そう、僕の顔色を伺うこの子は
隣の病室の…?
何ちゃんだっただろうか。



「大丈夫、あんたは?」


そう僕の態度は
いつだってそっけない…


「大丈夫です。
 私がぶつかったのに、
 優しいんですね…。」


この僕が…優しい?
きっとそれは
君の大きな勘違いだよ、


「…僕は優しくなんかないよ、
 当たり前の事を聞いた
 それまでだ。」


「当たり前ですか…。」


そう言いながら
顔を伏せる君を見て
僕は何故か反省した。

きっとあの子は
“当たり前”と言う言葉が
嫌いなのだろう…
だからそんな顔をしたんだ、


僕は初めて
知らない人に名前を聞いた。


「愛里。」


僕は初めて
…この知らない人を
好きになってみたいと想った。


最期の最期くらい…
人、一人は
愛してみたっていいですよね

神様…。


僕の寿命は
あと、三日。





5.dawn


君は可愛い。
君の横顔はとても綺麗だ。

僕は初めて持つ感情に
戸惑っていた…


好きになるということは
どういうことなのか?
人を愛すとは
どういう感情をいうのか?

僕には
何一つ、掴めない。


そんな時だった。

君の手が偶然にも
僕の手と重なったのだ…


僕より温度の低い君の手…
その手に触れたことから
速くなった鼓動に僕は問う。

これはいつもの発作かい?


それはとても優しい
発作だった…
まるで…気持ちが
高ぶってるみたいな、

発作だった…。



今度は
君に僕は問う、

嬉しいとは違う…
悲しいとは違う…
この鼓動が速くなる正体は

恋なの、ですか?


君は言う。

「きっとそれは恋ですよ。」



…あぁそうか
人を好きになるってことは
こういうことなのか。

苦しいようで
切ないような…
だけど、どこか嬉しくて
速くなって止まない
脈打つ鼓動の速さ…これ全部

君に向けた
恋の表れなんだ。



そうして僕は
やっと一つの答えを見出だす…、


「僕は君が好きみたいだ。」


「えっ…?」


君の小さな瞳が大きく揺れた。

ドキドキしてる…けど、
どこか不安にかられた
この感情。


これも恋の一部ですか?

君はこんな僕の問いに
応えてくれる…


「…その不安だけど幸せな
 気持ちを人は
“片想い”と呼ぶんですよ、」


「両想いには、
 なれないんですか?」


「なれますよ…
 その人もあなたを
 好きならば。」


そう笑う君の顔が
なんだか嬉しそうだった。


“私でよければ
 …恋の意味、教えてあげても
 いいですよ。”


僕はその日
たくさんたくさん、
ほころんだ。

これが…幸せって
感情なんだと知った…。


神様…僕の命は
あと、二日です。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ