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□THE TWINS
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  ことり、と小さな音がして、引き出しが開かれる。夜の闇の中、引き出しの中で眠る小さな手鏡が静かに月を映した。
 その光に魅せられて、いざなわれる過去。それは儚い憶い出――。


「あ、ヴィル!」
「・・・・・・何してるの?」
 彼が部屋に入るなり目にした光景は、なんとも奇妙なものだった。部屋の中央に置かれた大きな鏡と、その前で笑っている彼女。
「会ってたの」
 笑顔のままで振り向いて、彼女が答える。
「ほら、ヴィルも!」
 彼女に腕を引かれて、彼も鏡の前に立つ。鏡が並んだふたりを映した。
「ね、私もヴィルもいるよ」
 そう言って、彼女が鏡に映った彼女自身に手を伸ばす。鏡越しにふたつの手が重なった。その手が、鏡面をゆっくりと滑るように撫でた。
 慈しむように。
 愛しむように。
 目が、離せない――。
「ヴィル・・・・・・」
 ぽつりと呟かれたのは、彼らを分かつ、その、名前。
 つられたように、彼女へと手を伸ばし、その体を抱き寄せる。
「ディア」
「・・・・・・大丈夫」
 彼の腕の中で、彼女が小さく返す。
「大丈夫だよ。だってほら、ヴィルがいるから」
 彼女の視線の先にいるのは、鏡に映る彼女自身。
 そこに見出すのは、彼の面影。
 そう、誰よりも大切な、かけがえのない『もうひとり』。
「だからね、ヴィルだって私と一緒だよ」
 そう言って、彼女はまた笑った。
 綺麗に笑った。


 それから数日たったその日は、彼が城の外へと出かける日だった。いつもと違い、今回は数日は帰って来ることができそうになかった。
 数日とはいえ、気が重い。
「ヴィル!」
 背後から声をかけられて振り返ると、彼女が何かを手に駆け寄ってくるのが見えた。
「よかった、間に合った!」
 はいこれ、と差し出されたそれを見て、彼が目を瞠る。
 それは、小さな手鏡だった。精緻せいちな細工が施されており、一目で高価なものであるのが見て取れた。
「ディア・・・・・・」
「お守り」
 そう言って笑い、少し間を空けて続けた。
「時間かかりそうって聞いたから。ほら、」
 その手鏡を彼のほうへと向けて、彼女が告げる。
「ね、これでずっと私と一緒だよ」


「・・・・・・ディア」
 手鏡をそっと手に取り、小さくその名前を呼ぶ。
「いつも、一緒だ」
 その囁きが、夜闇の中で密やかに響く――。

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