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「似て非なる」


 きみの姿を見るたびに、ぼくの目はひとり暴走する。
 きみの姿を追いかけて、ぼくの目に、脳裏に、常にその姿を焼き付けようとするんだ。
 薄く茶色を散らせた瞳。整った鼻梁。少しだけ荒れた唇。華奢な体つき。
 けれどいつだって真っ先に目に付くのは、まるで何もかも知っているような黒をした、髪。
 しなやかにうなじを覆い、睫毛の落とす影を隠す。
 ――触れてみたい、と思う。
 黒絹のような――そんな一見ばかばかしい言葉のためにあつらえたかのようなそれは、ぼくの指を決して拒まない。そうと知っているから、ぼくの指や手や腕は全力でぼくに抗い、きみへ触れたがる。
 さらりと、何の抵抗もなくぼくの指先を滑る髪は、ぼくより少し長くて、艶やかで。
 ほんの少しだけ、ぼくに似ている。
 それが、ぼくときみの繋がりを明かしているようで、
 嬉しいけれど、……とても痛い。
 ねえ、どうしてだろうね?
 あと少し――あとほんの少しだけ踏み出せば、きみとぼくを結ぶ糸はきっと確実なものになるのに。わかっていないはずなんてないのに。
 どうして、きみも、…ぼくも、その少しを埋められずにいるんだろうね?


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