Lovers

□抱 き し め た い
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『なんでやねん…。』


「…なにが?」


『なんで…ここにおるん?』


「ん?ケンちゃん元気かなぁと思って…。」


『普段そんなんで来ぉへんくせに。』


「それから、お魚さんのエサやらなきゃと思って。」


『はい?』


「剛、最近忙しいって言ってたから、ちゃんとできてないかなぁと思って…。」


『…それで?』


「…うん、それだけ、だよ。」



つつつーっと僕に擦り寄って


僕のお腹に腕を回して


「…ごめん、嘘。」


君の声が愛しい


細い腕


少し冷たくなった手


「会いたかったから…来ちゃいました。」


僕は回された腕を1度ほどいて


君と向き合い、抱き締め返した


『やっと、言うた…。ほんまに素直やないんやから…。』



「…だからぁ、ごめん…。」



えぇよ。別にそんなんえぇねん。



連絡もなしに僕の家に君が来た


帰って来た僕を見て


とっさについた君の嘘


苦し紛れの可愛い嘘


初めて使ったであろう、僕の家の合い鍵


君はどんな想いで、使ったんやろうか…。



『今度、僕もおんなじことしたろ。』



「えっ!?ダメ!絶対!!」


『なんでやねん。』


「来る時は言って!部屋片付けとくから!!」



君はほんまに可愛えぇな。


どんな言葉も仕草も



「…ねぇ?」



『うん?』



「…いつまでこうしてる?」



『んー、もう離れたい?』



「…ううん。もうちょっと、こうしてたい…。」



君の抱き返す力が少しだけ強まった



もうずっと、一生このままでもえぇよ



君をこの腕で



守っていくから…








-*fin*-


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