Lovers

□ありがとうが言えない。
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「ねぇ、笑って。」





「そんな顔しないでよ。」






悲しいことがあった


辛いことがあった


だから涙が出た


溢れて止まらなかった


でも君は笑ってる






「あたしのために、笑っててよ…。」






…君のため?





僕の瞳から溢れた雫は


頬をつたい、首筋へ流れていく






「剛が泣いてると、幸せが逃げてっちゃう。」





「剛が幸せになるために、あたしは笑ってなくちゃいけない。」





「だから、あたしのために…笑って?」





「あたしも笑うから。剛の幸せのために笑うから。」





「ほら、にぃーって!」






君の手が、僕の頬に触れた


もうこれ以上流れないように


君の手が行く先を阻む


だから僕は、また笑えるんや






『もう、えぇよ。』





『もう、えぇって。』





『笑うから。』






君を幸せにしたいから






『そやから、そんな笑顔で…泣かんでよ。』






僕が幸せになりたいから






「…もらい泣きだもん。」






君の肩が揺れるのを確認しながら






『ごめん。』






抱き締めた






「ごめんなんて、いらない。笑って。」






君が求める笑顔の裏に


たくさんのありがとうを隠した


“ありがとう”なんて…


この気持ち、そんな容易く言えへんよ






『おまえの笑顔は、天下一品やな。』






君が笑える幸せを




君と笑える幸せを












-*fin*-


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