Darling
□Sign
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たまたま立ち寄った本屋さん。
ファッション誌コーナーの隣には、たくさんの知らない剛がいた。
せっかく、見ないようにしてたのに。
雑誌もテレビも。
会いたくなるだけだから。
でもコンビニや駅のホーム、色んな所であたしの知らない剛を見つけてしまう。
昨日だって、電車の中で見つけたんだよ。
それは隣に座る、若い女の子の携帯電話の中。
画面上で笑っている剛は、やっぱりあたしの知らない剛。
かっこいいだの、かわいいだの、話す声がする。
知ってるよ、そんなの。
あたしが一番…たぶん、知ってる…はず。
あたしは本屋の中をぐるぐるしながら考えていた。
どんなに想い合っていても、あたしだけの剛には絶対にならないってこと。
それが凄く寂しかった。
店内を何周かして、剛が表紙の雑誌を手に取った。
パラパラとページをめくって、剛のページへ辿りつく。
「…これって…。」
あたしの目に止まったのは、剛がかぶっている帽子。
この帽子は、あたしが友達と買い物に行った時に見つけた物で
剛に似合いそうだなと思って、プレゼントした物。
っていうか、どの雑誌でもこの帽子かぶってるじゃん。
剛が載っていそうな雑誌を片っ端から探して、いっきにレジへ運んだ。