Pures

□ノ ク タ ー ン
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外には雨が降っていた。

空は深い闇の様だった。

加湿器の音。

たまに身震いするくらいの、冷たい空気。




何度も経験しているはずの、こんな夜。

今日は君と、どんな話をしようかな。







「明日には止んでるかな、雨。」

『今夜いっぱいはぁ〜言うてたで。』

「ふーん…。」



なんや、眠いんか。



『おーい。』







頬をつんつんと突いたら

顔を反対側へ背けられた。







『結局こんなんか…。』







一人が寂しくて

ヘッドホンで耳を塞いでいた、あの頃。

好きな人が隣にいること。

それはとても幸せなこと。

だけどそれだけじゃなくて…。



この夜。

僕は君に、ただひたすら喋りかけていたかった。

気持ち良さそうに眠っているから

今日くらいはいいよね。







『もう、寝たよな?』

「…。」

『今から独り言いうけど、気にせんといてな。』

「…。」







君の頬に、今度は軽く触れた。







『良かった…。ほんまに、良かった。』











昨日、君と同じ靴を履いた人を見かけたよ。



君が言っていたカフェで、オススメのランチを食べたよ。



携帯の着信音、君のだけ変えてみたよ。

どんな曲かは、まだ教えないけど。

ん?興味ないって?

そう言うと思ったよ。



本当は、明日言おうと思ってたけど…

ま、えぇか。

君に出逢って、僕の人生は毎日が輝くようになったよ。

愛を語るのは照れ臭いから、これぐらいにしときます。

おやすみ。







そう君に言えたのは、既に夢の中だった。







雨があがって、眩しいくらいの光が

木の葉の雫に反射していた。





目覚めたのは僕だけで、君はまだ眠っていた。




昨日僕は、どこまで君に伝えられたんだろう。

そう思って、君の顔を覗き込んだ時、

しっかりと繋がれた君と僕の手。

そして、うっすら残った涙の痕。




あ、ちゃんと言えていたんだ。
君にも、聞こえていたんだ。



君の目が覚めたら、なんて言おうかな。

やっぱり少し恥ずかしいから


好きだよ


ぐらいにしておこう。

その前にきつく抱き締めてしまおう。

この胸の奥が、君でいっぱいなうちに。













-*fin*-


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