Pures

□恋 繋 ぎ
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軽く握り返すと
微かな脈の振動と
確かな熱で
僕は始まりを知る。

キスから始めるんだ。
何もかもが始まっていくんだ。
昨日という過去に
終わりを告げた日々たちに
僕たちはまた
キスから恋を始めるんだ。





「…寂しがり屋が治る薬。」

『…治さんでえぇやんか。』

「だって寂しいの、嫌いだもん。」





もっと明るい未来だけを見ていたい。
そうずっと思っていたけど、今言えることはひとつだけ。
君を守るってこと。
この先が決して明るいだけの未来じゃなくても
関係ないんだ、きっと。





『これで治るんやったら何度でもするよ?』

「剛の温もりを覚えてるから、神様はきっと我慢しなさいって言うと思うな。」

『神様?』

「そう、ちょっと意地悪な神様。」

『ふーん、見えんねや。』

「うん。たまにあたしんちの鍵隠すんだよ?」

『それなくしただけちゃうの?』

「違うよ。今日は我慢しなさいって、そうあたしに言ってるんだよ。」

『そら、随分意地悪やな(笑)』

「でもあたしの勝ちなんだ。」

『なんで?』

「さっき言った、温もりを覚えてるから。だから闘えるの。」





丸く大きな瞳の奥に光がさして見えた。



僕は部屋のどこかで鳴っている携帯の着信音に聞こえないフリをして
また君を手繰り寄せた。





「剛、呼ばれてるよ。」

『うーん、聞こえへんな。』

「つよし。」

『ん?』

「あたしの声は聞こえるんだ。」





キスが始まる。
僕たちのリズムに
胸は跳ね上がる。


何度“好き”と呟いても
“愛してる”と囁いても
始まりはいつもキス。
恋と愛と君と僕を
繋げる接着剤みたいなもの。
そして
明日と希望と君と僕を。
君と僕の未来を。













-*fin*-


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