頂き物
□ココロ★オレンジ
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「ピエロ君……?」
「あのね、そんなに不安に感じなくても、いいと思うよ。僕も、いろんな所を回っているけど、団員のみんながいるから、どこに行っても平気。君にもお父さんとお母さんがいるじゃない。大丈夫だよ」
それに、それに……
言わなくちゃという気持ちでいっぱいで、なかなか言葉が出てこない。滅多に話さなかったことも災いしてるのか、いい言葉が浮かばない。それでもなんとか声を出した。
「それに、どこに行っても、友達はできるよ!心の通う友達が……僕、とっても嬉しかったんだ。何も話してないのに、君はすぐに僕が何をしたいのか、何を言いたいのか、わかってくれたから。だから、その……」
あー何言ってるんだろ?だから……
すると、僕が困っているのを見抜いたように、男の子が引き継いでくれた。
「じゃあ、ピエロ君と僕は“心の通う友達”だね! どこにいても一緒だよ!」
それは同年代の友達がいない僕にとっては嬉しい一言だった。
男の子はポケットの中から小さなメモを取り出して、何かを書いて僕に渡した。そこには住所と名前が書いてあった。
「なかなか会えないけど、また手紙書いて! 僕も、サーカスのいる場所に行けそうだったら、見に行くから!」
「うん!」
男の子は晴れやかな顔をして両親に連れられて帰っていった。
その姿が消えるまで見送り、もらったメモを大事にしまって僕は一度着替えてから電気屋へと向かった。
翌日――
「トゥク、なんで電球がいつもと違うんだ?」
「さぁ?私にもわかりません、団長。多分……こういう色の気分だったんでしょう」
「なんだそれは」
呆れた顔をする団長に苦笑いを返し、トゥクさんが舞台袖からこちらを見た。
新たなオレンジ色の光の下、僕は今日もおどけます。
別人としてではなく、僕が僕であるために。人に元気を与えるために――。
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