頂き物
□ココロ★オレンジ
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ショーは大盛況に終わった。僕は今日も最後から二番目の、団長がやるマジックの前が出番だった。曲芸を見せたり、慌てて転んだ振りをしたり、とにかくお客さんを笑わせた。
でも、最前列にいたあの子が気になって仕方がなかった。
笑っていたけれど、心から楽しんでいたようには見えなかったから……
小屋からお客さんが出払って、団員も片付けに入ったとき、あの子がサーカス小屋のある広場の隅の方にあるベンチに座っているのを見つけた。
本当にどうしたんだろ?気になる……って言っても、まだピエロのままだから、声を掛けるわけでもないけど。
僕がそわそわしていると、トゥクさんが僕に電球を買ってきてほしいと言った。そういえば、小屋の天井から下がっている電球が切れかかっていたなぁ。
でも、そんなに急いで取り替えるほどでもなかったような……?
他の団員にも話を通してくれているようで、僕が片付けを離れようとしても咎める人はいなかった。
トゥクさんはお金がいくらか入った財布と、電気屋の地図をくれた。
でも、もう夜だし、電気屋さんは閉まってるんじゃないの?それに、僕、着替えてからじゃないと行けないよ?
それらのことを必死に伝えようとすると、珍しくトゥクさんは僕の行動を気にも留めず、早く行けと背中を押した。
わかってもらえなかったことで不貞腐れながら舌を出すと、トゥクさんはベンチを見やってから僕にウインクして、中に引き上げていった。
もしかしてトゥクさん、気付いてくれてたの?
きっと、他の団員もわかってくれているのだ。
たくさんの感謝を胸に、僕は男の子の方へ駆け出した。
うつむいていた男の子は、視界の隅に尖った靴を見つけ、顔を上げた。
「ピエロ君……」
どうしたの?と首を傾げると、男の子は力なく笑った。
「なんでもないよ。ちょっと考え事をしてただけ」
そうは言ってるけど、とてもなんでもないようには見えない。
元気を出して欲しくて、飛んだり跳ねたり、片手で逆立ちしたりして見せた。