頂き物

□ユメ
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「どしたの」
「あー…ヤベ」



教室の隅に貼り付けてあるカレンダーを凝視したまま動かない佐川の肩を、ゆさゆさと揺さぶる。

すると、いきなり黒河へと視線を戻し、肩をガッシリ掴まれた。



「おい」
「な、なに!?」

「宿題。憲法のレポート」
「あ、うん」

「締め切りいつよ」



言葉からして、かなり切羽つまっているのがわかる。

黒河は、うーん と一唸りして口を開く。



「えっと、たしか明日だよね」
「……だよな、だよなぁ…」



はぁぁ と長い溜め息をつきながらその場にへたり込む佐川。

黒河は、机の傍で小さく丸まっている佐川のアタマを眺めながら言った。



「…まだやってないんだ」
「そー」

「ありゃ、今夜は徹夜だねー。僕はやってあるけどっ」



ケタケタと笑う黒河を見て、何かを思いついた様子の佐川。

丸まっている身体を解放し、スッと立ち上がり黒河を見る。



「なに?」
「黒河クン」

「“クン”って…気持ち悪いなぁ」
「お願いがあるんだけど」

「…なに?」



たぶん、予想は当たってる。
どうせ………



「レポート、写させてくれっ!」


やっぱり。


しかし、黒河はそれを受け入れようとはしない。



「無理だよ。おんなじ文章だったら先生にバレるし」
「そこは心配すんなっ!内容を変えないくらいにチョイチョイっと変えればバレないって!」



だから、なっ! と、手を合わせてすがってくる佐川。


「…どうせ断っても今日家に来る気でしょ」

「もちろんだともっ!」



ダメだ

コイツには勝てないや。



「…しょーがないなぁ」
「マジ!?ぃよっしゃァァ!!!」



大きくガッツポーズをする佐川。


「さすがだぁ!俺の心の友よぉっ!!」
「そのセリフ、どっかで聞いたことあるな…」


 
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