頂き物

□ユメ
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「んじゃ、お邪魔しまーす」
「ハイハイ」



放課後 佐川は早速制服のまま家に来た。

そして、必ず初めにこう言う。



「はぁー、相変わらずキレイにしてんなぁ…一人暮らしのクセに」
「一度散らかすと、すぐにゴミの山になるからねぇ」

「台所はっと……またか」
「仕方ないじゃんか…」



“また”とは、キッチンの状態。


白い壁に似合う、きちんと整理された部屋なのに…

キッチンだけは、壊滅状態だった。



「もう、ドジを通り越して最悪…だぞ。こりゃ」
「うん…」

「お前、メシは美味いんだけどなぁ…」



佐川は、ちらりとそのグチャグチャになったキッチンに目をやる。

皿は割れているのを放置してあるし、包丁は床に刺さっている。
フォークは台所用スポンジに刺さっているし、皿洗い洗剤はトロトロこぼれていた。

他にも、見るも無惨なモノが大量に転がっていて…
キレイな部屋とはギャップがありすぎて、何故かめまいがした。



「…チッ…しゃあねぇなぁ…」


佐川はかるく舌打ちをすると、キッチンへ入っていった。



「佐川?」
「レポート見せてもらう礼だ」


そう言うと、大きな溜め息をついて服の袖をまくったのだった…










「これでどーだ!」
「すごい!佐川、天才!!」
「フフン」


約一時間の苦闘の末
二人の目の前にはピカピカのキッチンがあった。

洗剤もこぼれていないし、床に刺さった包丁もない。



「うわぁ、ホントありがとう!僕が始末するとさ、余計に状態が悪化するモンで…」

「これからは気をつけるよーに」

「了解っ!」


ビシッと敬礼の仕草をする。
それを見て、佐川は片手を差し出した。


「…ん?」
「報酬だよ、ホウシュウっ」
「あぁ、レポートね」



苦笑しながらスタスタと机へ向かう。
テキストなどが入った棚から、一つファイルを抜き取った。


「はい、この中に入ってるよ」
「よっしゃ!ありがとな!!」



僅かにガッツポーズをし、『写すぜェェ』と意気込む佐川。
早速鞄から筆入れを取り出し、床に置いてあるテーブルに向かってレポートを写しだした。
 
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