夢幻神話─本編─
□第七章
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(体の割には反応が早い……けど)
明日香の瑠璃色の瞳はまばたきをせずに様子を見つめた。
「薫さん! 上方から攻撃してみて下さい!」
明日香が叫んだ。薫はその言葉に一瞬戸惑った表情をするも頷いた。2、3歩下がると強く踏み切って飛び上がった。
「いくぞ、『火炎竜巻』!」
突き出した薫の右手からドンという鈍い爆発音と共に螺旋状の炎が撃たれた。炎は妖に直撃し──炎の陰から妖が放った雷が薫に向かってきた。
「うわっ!」
雷をもろに食らいバランスを崩した薫はそのまま地面へと真っ逆さまに墜落、すると思われた時。
「『水泡護散』!」
薫の真下に水のボールが起こった──ムクムクと巨大化したボールは薫が落ちると彼女を包み込む様に変形し、そして弾けた。
ポカンとした表情で座り込む彼女の後ろで術者である明日香は叫んだ。
「見えました、左上方からの攻撃に弱いです!」
「……なるほどな」
貴之が険しい表情で呟いた。妖が低い呻き声を上げて、貴之を睨んだ。