夢幻神話─本編─
□第七章
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相性上『雷』に強いのは『地』と『炎』──だから翔は薫と貴之を残し、自身は反対側に移動して攻撃を続けた。そうすればあらゆる方向から攻撃出来る──翔はそう踏んでいた。
この時『雷』を司る貴之は翔と一緒に移っても良かった。別にこの程度の高さならビルを飛び移る位造作もなかったが、彼はこの場に残る事にした。
一緒にいる『炎』の巫女──薫の様子が気にかかったからである。
前線で攻撃しつつも時折彼女の方に視線を送る──何処かしら集中しきれてない様子であるのは明らかだった。
(あまり長引かせるのは命取りやな……出来れば翔にドドメ刺してもらうんがエェけど)
心の中で小さく舌打ちした──あの妖の反応では翔がドドメを刺すのはほぼ不可能だからだ。
「『岩槍落発』!」
翔が向かい側から槍状の岩を放つ──が呆気なく叩き落とされた。妖が翔に気を取られている瞬間、貴之はサッカーボールの大きさの雷の玉を放った。
「『電磁砲』!」
攻撃は当たった──が妖を怒らせてしまったらしい、妖は貴之が放ったモノよりも大きな雷を放った。
妖の近くに居たとはいえ貴之の反射神経で避けられない訳ではなかった。だが彼の後ろにいるはずの少女は存在を認識していなかったらしい。
「何ボサッとしてんのや、薫ゥ!」