夢幻神話─本編─

□第七章
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 貴之の叫び声に少女──薫はハッとした表情になった。その瞬間には妖の雷が目の前に迫っていた。

「うわっ!」

 攻撃を避けるには気づくのが遅すぎて、薫は為す術も無く攻撃を被った。

「薫さんっ!」

 悲鳴が聞こえたのと、薫が壁に叩きつけられたのはほぼ同時だった。だが薫の体には走る筈の鋭い衝撃は全く無く、代わりに柔らかい感触と直後に何かが自分の背中に体重が掛かるのを感じた。

 薫が振り返ると後方で待機していた筈の明日香が気を失って彼女にもたれ掛かっていた。明日香が自分を庇った事に気付いたのはその時だった。

「おい、明日香! しっかりしろ!」

 薫が明日香を揺さぶり起こそうとした時、翔の叫び声が聞こえた。

「! 薫、気をつけろ!」

 声の方向を見れば、妖がまた雷の塊を吐き出していた──だが気を失っている明日香がいる以上避けられない。薫は明日香を庇う様に抱きしめた。

「薫ッ!」

 何かがぶつかり合い、弾ける音がした──そして来る筈の雷がいつまで経っても来なかった。

 薫は恐る恐る後ろを振り返ると、2人に立ちはだかる様に、黒髪のセーラー服の少女が立っていた。

「怪我は有りませんこと?」

「千尋……」

 彼女が突き出した右手を下ろした。
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