夢幻神話─本編─
□第七章
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「千尋、明日香は……?」
「大丈夫、気を失っているだけですわ」
力なくもたれ掛かる明日香の首筋に手を当てると、千尋は安心させるような笑顔で薫に告げた。だがその表情も直ぐに引き締まり、千尋は強い口調で告げた。
「薫、直ぐに戻って下さい。時間はありませんわ」
「でも……」
「この状況では貴女しか妖に決定打を与えられません。貴女がやらなければ私達がやられるだけですわ」
千尋の強い瞳に射竦められたように──いつもの彼女らしからぬ弱気な口調で返した。
「あたしには無理だよ。さっきも見ただろう? あたしには出来ない……」
「薫、出来る出来ないの問題ではありません。やるかやらないか、ではありませんこと?」
千尋の言葉に返す言葉が無いのか黙り込む薫。千尋は安心させる様に柔らかい笑顔を浮かべた。
「大丈夫ですわ。此処には貴之や翔もいます、彼らがサポートしてくれますわ」
薫はそれでも黙っていた──刹那近くで凄まじい音がした。