夢幻神話─本編─
□プロローグ
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真っ暗な世界で私は歩いていた。
穏やかな風が頬を撫でて、私の髪を掻き乱す──私は邪魔そうに髪を後ろに押しやると周りを見回した。
『此処は……何処?』
外の世界であるのは確か──でもどこかで見たことがある様な……
目が慣れてきてボンヤリと輪郭が見えた
──あれは私の通う学校、しかも中央に立つ時計台だ。
私は時計台に煉瓦の壁に近寄りそっと手を触れた。殺那強い風が私を襲った。
弾かれたように振り返った私の瞳に映ったのは──同じ年くらいの人達。
暗くて顔は見えないが……恐らく高校生だろう。
そのうちの一人、真ん中に立っていた灰色の髪の少年がゆったりとした足取りで私に近寄ってくる。
不審に思って逃げようと思っても、私の想いに反比例して足が硬直していく。
少年が私の腕を引き寄せて手の上に何かを載せた。
恐る恐る開いた手の中には、私の瞳と同じ色の──瑠璃色の指輪が月の光を受けて眩く光っていた。
指が自然と指輪に動き私は──
──遠くでアラーム音が鳴ったような気がした。