骸はオレのことを名前で呼ばない。
ボンゴレだったり沢田綱吉だったり。組織名やフルネームで呼ぶのに、名前では呼んでくれないんだ。
オレは骸のことちゃんと名前で呼んでるのに。そんなのって何かズルイ。
オレだけがすきみたいだ。






call me








「骸ってさ、オレのこと名前で呼ばないよね」
だから、つい出してしまったんだ。本音を。
ただ、ボソリと呟いただけだけど。
それでも、ちゃんと聞こえていたみたいで。なんの脈絡もなしに言った言葉に、骸は目を真ん丸にしてオレを見た。
あぁ、こいつでもこんな顔するんだ。なんて、ぼんやり思った。
ギュッと抱き締めたくなるくらい愛しく感じるのはどうしてなんだろう。
「……名前」
「え?」
驚いた表情のまま骸が呟いた言葉に聞き返す。
名前?
よく分からなくて首を傾げれば不意に伸びた手が頬に触れてくる。
優しく触れてくるそれに顔をあげれば、いつもの表情(と言ってもなんだか優しい感じがするんだけど)に戻った骸と目が合う。
「骸?」
どうしたの?と聞く代わりに名前を呼ぶ。
そんなオレに骸は微笑んで、頬を撫でる手を止めた。
「名前で」
「え?」
「名前で呼んでも良いんですか?」
遠慮がちにつむがれた言葉。
何の了承も無しに人の体を乗っ盗ろうしたくせに、こんなとこで遠慮するなんて変な奴。そう思ったけど、見つめてくる目に口に出すことは出来なかった。
優しくて、そしてなんだか今にも泣き出しそうなくらい切ない目をしていたから。
またギュッて抱き締めたくなった。オレはここにいるよって。お前の側にいるよって。
そんなこと、恥ずかしくて出来やしないんだけど。
相変わらず、目の前の左右色の違う瞳は不安気な色を映していて。それを安心させるように頬にそえられた手に、自分のを重ねた。
骸は驚いたように目をしばたかせている。
あんな目されたら断ることなんて出来ない。断る気なんてないけれど。
少し恥ずかしくて、誤魔化すように口を緩ませから、コクリ、と小さく頷いた。

今、骸がどんな顔しているかなんてオレは分からない。
あんまり恥ずかしくて、うつ向いてしまったから。
けど、聞いたことない様な優しい声で呼ばれたオレの名前に、見たことない様な優しい表情をしているんだろうなって思った。
それが見れないのは残念だけど、恥ずかしすぎて顔を上げることなんて出来ない。
名前を呼ばれただけで顔が真っ赤になるなんて、やっぱりオレだけがすきみたいだ。
それが悔しくて、少し強めに重ねた手を握った。




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