novel(long)

□恋の試練〜告白
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「ウソップ、今日はバイトの無い日だろ?」


そこは裏庭でも特に人目に付かない静かな場所。

目の前には大きなイチョウの大木。

その下にあるベンチで、ウソップはまったりするのが好きだった。


気が向いたときには、たまにスケッチをする事もある。


ほとんど毎日の様に、登校途中に買ってくる菓子パンにかじりついていた。

たまにはつき合いでクラスの友人と学食に行く事もあったが、大抵は一人でそこにいる。


サンジが顔を出すのは必ずと言って良いほど、ウソップがいつものランチを食べ終える頃だ。


「ん?サンジ?」


ウソップはパックの牛乳をすすりながら、木々の隙間からの心地よい日差しにウトウトしだしているところだった。


「今日も一緒に来るか?」


ウソップがバイトの無い日は、サンジの祖父ゼフの店「バラティエ」に寄って帰る事がある。


そういう時は、決まって一緒に夕食の賄いを食べさせてもらっている。


ウソップには、ありがたい事だ。


食費が助かる上、巷で大評判の味が味わえるのだから。


「い、いや今日はちょっと用事があって…ι」
「あぁ?!」


いつもなら二つ返事で返ってくる言葉が返って来ず、思ってみなかった言葉がサンジを苛つかせた。


「何だ用事って」
「え?い、いや、大したことじゃねぇんだけど…ι」


ウソップの煮え切らない言葉が何故か引っかかる。


「悪ぃサンジ、ありがとな」


ウソップはそう言うと、近くのゴミ箱にポイッと空の牛乳パックを投げ入れ、そそくさとその場を立ち去った。


「なんだ、あいつ」


ウソップの香りをほのかに残したその場所を、サンジのスラリとした足が空を高く蹴った。






「なぁに〜?不機嫌ね〜」


何故か解らないイライラが消えないまま、放課後になってしまった。


サンジが下駄箱で靴を履き替えていると、背後から可愛らしい聞き慣れた声が聞こえた。


「んナミさ〜〜ん♪」


ウソップ、サンジの共通の友人だ。


ウソップとは少し前のバイト仲間で、ナミがバイトを辞めた後も学校で顔を合わせるとたわいもない話をしたり、ウソップを何かとからかってきたりと、ナミは二人を気に入っているらしい。


このサンジの何度ものラブハリケーン攻撃を受けても一切効果無しの相手でもある。


「あら?今日はウソップと一緒じゃないの?バイトの日じゃないわよね?」


ナミがそう聞くのも当然、ナミが見かけるときは大抵二人は連んでいるからだ。


何時もいるはずのウソップがいない事に気付き、何となくサンジの先ほどの態度が理解出来た。


「ふ〜ん、だからなのね〜」
「え?」
「ううん、別に〜」
「あいつは何か用事があるみたいで…」


人前ではお互いに対して素っ気ない態度をしてるつもりでも、知らぬは本人達ばかり。


いつもお互いを知らず知らずに気にしてるくせに。


特にサンジ君の方が…


などと思いつつ、


「あいつがサンジ君をほったらかす位大事な用事って何かしらね〜?」


ナミは意味深めいた口調で、サンジを上目使いで見つめた。


「さ、さぁ…ιそ、それよりナミさん、一緒にお茶でもいかがですか?」


さっきの不機嫌な態度とは裏腹にビシッとかしこまってナミに手を差し伸べたが、


「ごめんね〜、サンジ君。ありがたいんだけど、これからデートなの♪」


ニッコリ笑いながらナミは手を振って行ってしまった。


「ナミさん…ι」


またもや置いてけぼりを食ったサンジだった。





「あいつ、まだいるかしら…」


ナミは早足で体育館へと続く渡り廊下を歩いていた。


ふと、遠くに二つの人影が見えた。
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