novel(long)
□学園祭の試練〜秋
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「もうすぐ学園祭だな〜、な、サンジ」
「あぁ、そうだな」
10月にもなると、どこもかしこもすっかり秋めいて、ウソップのお気に入りのイチョウの木も黄色く色づき始めていた。
ウソップとサンジが通うこの高校も、辺りの雰囲気に同乗し、日に日に賑やかさが増してきていた。
お昼休み。
ランチを取り終わり、二人まったりとイチョウの木の下のベンチでのんびりと過ごしていた。
「なぁ、サンジ。そう言えば、ナミの有志参加するっていう喫茶店、手伝うんだって?」
「ああ。お前もだろ?」
この10月末に行われる学校行事の学園祭。
ナミが有志で参加する事になり、サンジもウソップも助っ人を頼まれていた。
…半ば強制的に…。
サンジの事だ、ナミからの誘いを断るハズもない。
もうすでに着々と準備に取りかかりつつあるので、何かとせわしなくなっていた。
「ああ、俺?ナミにも頼まれたんだけどよ、俺は当日の助っ人のみ。ま、部屋のコーディネートなんかのアドバイスはすることになってるんだけどな。実は、メインゲートに飾る立て看板を美術部の奴らと制作中なんだ。生徒会に頼まれて。まぁ、俺は手伝いみたいなもんだけどな。」
そういいつつも、めちゃくちゃ嬉しそうな顔だ。
元々絵を描くのが好きで中学生の頃は美術部に入っていたが、母親が亡くなってから一人暮らしを始めた為、バイトが忙しくなり、部活動に参加していないのだ。
今回の事は、ウソップの事情を良く知る人物、エースの計らいで、学校にいる間とバイトの無い日の放課後だけでもと、立て看板制作の助っ人を依頼されたのだ。
もちろん、ウソップの才能を知っていての事だ。
「生徒会って、エースか?」
「ああ」
"エース"と言う名をウソップの口から聞いた途端、不機嫌そうに変わったサンジの表情。
「サンジぃ、何だその顔〜。エースの話になると何でいつも不機嫌になるんだよっ」
「んな事ねぇよっ!」
「お前のそういうとこ、治した方がいいぜ」
ウソップは呆れた様子でサンジを見つめると、サンジは面白くなさそうにベンチから立ち上がった。
と同時にさも打ち合わせていたように予鈴が鳴り響いた。
「じゃあな、サンジ」
「…… ウソップ!がんばれよ。」
ウソップはサンジの方を振り向き、一瞬きょとんとしたが、すぐにサンジの意志が通じたのだろう。
「おお!サンキュ〜。お前こそ頑張れよっ」
ニカッと顔一杯の笑顔をサンジに向けながら手を振り、バタバタと走って行った。